山パンが「ランチパック」を増産する理由 人口減の中、26年ぶりの新工場に踏み切る

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こうした変化は消費者の「買い方」にも現れている。山崎製パンによると、販路別では何と言ってもコンビニが牽引役。コンビニ各社の出店合戦に加え、ローソン向けのPB(プライベートブランド)の取引が増えた。さらに最近伸びているのがドラッグストア向けだ。ドラッグストアでは、パンをはじめとした加工食品が集客の目玉となる。

菓子パンは5年間で10%超増

山崎製パンの製品の中では、たまごやツナマヨネーズなどランチパックの総菜シリーズ、カレーパンなどの売り上げが特に好調で、これらの製品を含む「菓子パン」セグメントの売上高は2010年からの5年間で10%以上増えた。ロイヤルブレッドなど「食パン」セグメントも堅調だ。

時短・簡便志向で食パン「ロイヤルブレッド」や「ランチパック」総菜シリーズの売り上げが好調。

もちろん、新工場決定の背景には社内的な要因もある。国内のトップメーカーとして順調に業績を伸ばしてきた山崎製パンは、2015年12月期にはじめて売上高が1兆円を突破。好採算の主力品を安売りせずに展開する戦略が奏功し、本業のもうけを示す営業利益も2ケタ増益が続く。

これまではパンの需要増に対して、既存工場の製造ラインを増設したり、他社工場を買い取り改修して対応。それぞれの投資規模は数十億円程度に過ぎなかった。今回、約200億円をかけた大型投資に踏み切るのは、財務体質が強固になったことに加え、次の成長戦略に向けた種まきという側面もある。

すでに「神戸新工場では増床や製造ラインの増設を視野に入れている」(同社)。ランチパックなどの増産により、山崎製パンは新たなステージに踏み出す。

 

中山 一貴 東洋経済 記者

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なかやま かずき / Kazuki Nakayama

趣味はTwitter(@overk0823)。1991年生まれ。東京外国語大学中国語専攻卒。在学中に北京師範大学文学部へ留学。2015年、東洋経済新報社に入社。食品・小売り業界の担当記者や『会社四季報 業界地図』編集長、『週刊東洋経済』編集部、『会社四季報』編集部、「会社四季報オンライン」編集部、『米国会社四季報』編集長などを経て2023年10月から東洋経済編集部(マーケティング担当、編集者)。「財新・東洋経済スタジオ」スタッフを兼任。

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