初公開、これが「ホーム転落事故」の多い駅だ 池袋、天神、本川越、梅田、阿部野橋の共通点

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頭端式ホームの場合、乗車用と降車用でホームを分けている鉄道事業者も多い。朝夕のラッシュ時に乗り降りがスムーズになり乗車時間の短縮や混雑解消が図れるというメリットもある。西鉄は「乗車ホームと降車ホームを別々に運用することでスムーズな乗降取り扱いができている」と言う。健常者には効率的なシステムだが、山城氏は「視覚障害者にはわかりづらい」という。確かに間違えて降車専用ホームに入ってしまうことはあるかもしれない。

事故件数が上位だった鉄道事業者にどのような対策を講じているか聞いてみた。池袋駅と本川越を抱える西武は、「池袋駅では2013年に内方線(どちらがホームの内側かを示す線状の突起物)を設置し、また2015年度から2017年度にかけてホームドアを設置工事中。このため2014年度以降は転落事故が減った」としている。ホームドアの設置が完了すれば、転落事故や接触事故はゼロになるに違いない。本川越駅については、「2012年に内方線整備に加え、弱視のお客様向けに一部のホーム端部を塗色した」。これらの施策により、2013年以降の転落件数は1件にとどまっている。

ホーム終端と電車の間が落ちやすい

西鉄福岡駅は電車がホーム終端から12メートルも手前で止まる。これが転落事故の一因となっていた。そこで西鉄は2014年にそれまで4.5メートルだったホーム終端側の固定柵を12メートルに延長し、電車とホーム終端に隙間が出ないようにした。その結果、「設置後の視覚障害者の転落事故は減少した」と西鉄は説明している。

近鉄も西鉄と同様だ。大阪阿部野橋駅、大阪上本町駅、京都駅、近鉄奈良駅など頭端式ホームを持つ駅では転落事故防止に向け、電車とホーム終端との間に転落防止柵を設置した。大阪阿部野橋駅では2011年に柵を設置。しかし、電車が柵の手前で止まっていたため、電車と柵の間に若干のスペースが残り、やはり転落する人がでた。そこで2012年に柵の距離を伸ばして、まったく隙間が出ないようにした。その後、視覚障害者の転落事故は発生していないという。

事故件数上位に頭端式ホームの駅が並ぶ結果となったが、だからといって、頭端式ホームが事故の起きやすい構造だとは必ずしも言い切れない。10面9線の頭端ホームを持つ阪急梅田駅をはじめ、京王(本線)新宿駅、小田急新宿駅、東急池上線蒲田駅などのように頭端式ホームであっても、視覚障害者の事故が5年間で1件も起きていない駅はいくつもある。問題点があるかどうかは、専門家や実際に駅を利用している視覚障害者の意見を聞いてみる必要があるだろう。

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