アベノミクス成長戦略への「2つの誤解」 成長戦略では、そもそも成長できないのが当たり前

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成長戦略では、成長しない

したがって、成長戦略では成長できない。するはずがない。既存の枠組みを強化する、効率化するだけで、経済にとってはプラスの可能性はあるが、部分的な改善で、中期的に多少生産性が上がるが、抜本的な変革が実現するはずがない。選挙で多数派として選ばれている以上、既存の企業構造を生かした政策以外ありえないからだ。

既得権益打破を与党に期待するのは間違っている。世の中が既得権益と新興勢力に分かれるとすると、多数派は広い意味での既得権益者なのだ。だから、既得権益者である、現在成功している伝統的な大企業構造を破壊して、革新的な成長を期待するのであれば、それは政権、政策の外から独自に成長する企業に期待するしかないのであり、実際、これまでもそうやって実現してきたのだ。

だから、成長戦略に失望することはない。成長戦略では成長できない。だが、それでも経済は成長できるのである。

小幡 績 慶應義塾大学大学院教授

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おばた せき / Seki Obata

株主総会やメディアでも積極的に発言する行動派経済学者。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。1992年東京大学経済学部首席卒業、大蔵省(現・財務省)入省、1999年退職。2001~2003年一橋大学経済研究所専任講師。2003年慶應大学大学院経営管理研究学科(慶應義塾大学ビジネススクール)准教授、2023年教授。2001年ハーバード大学経済学博士(Ph.D.)。著書に『アフターバブル』(東洋経済新報社)、『GPIF 世界最大の機関投資家』(同)、『すべての経済はバブルに通じる』(光文社新書)、『ネット株の心理学』(MYCOM新書)、『株式投資 最強のサバイバル理論』(共著、洋泉社)などがある。

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