「あごの異変」を放置している人に訪れる不調 10~30代に多い顎関節症を軽く見るな

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原因その⑤:悪い噛み合わせや歯並び

噛み合わせや歯並びについてはさまざまな意見がありますが、現在では多くの原因の中のひとつと考えられています。噛み癖やブラキシズムの原因として関連しているともいわれています。

そのほかにも食事や歯の治療などで大きく口を開けたり、スポーツなどで顎などに強いダメージが加わったりすることによっても引き起こされます。もともと顎関節や筋肉が構造的に弱いとかかりやすくなるとされています。

治療をするには

顎関節症の治療方法はいくつかあります。

治療その①:マウスピースの作製

最も一般的に行われる治療方法として、プラスチックで出来たマウスピースによる治療方法があります。マウスピースを調整することであごの位置を調整します。また、寝ている間に起こる無意識の食いしばりや歯ぎしりから歯を保護します。そうすることであごが安静になり、徐々に症状が改善していきます。 

治療その②薬の処方

鎮痛剤や消炎剤を飲むことにより痛みと炎症を抑えます 。慢性化した炎症を抑えて、痛みの軽減を図ります。

治療その③:レーザー治療

顎関節の痛い部分にレーザーを当てることによって神経に作用し、痛みが減り、自然の治癒力が促進します。

治療その④:外科手術

非常にまれですが、中にはあごの関節やその周りが変形してしまっている場合など手術をする場合もあります。

また、自宅でのセルフケアは顎関節症を改善するうえでは必須です。たとえば、症状が強い時には「顎関節や筋肉部位を冷やす」「大きく口を開けるのを避ける」「硬いものを食べるのを避ける」「急に口を開閉しない」などを実行します。症状が和らいできたら、「顎関節や筋肉部位を温める」「筋肉のマッサージをする」「筋肉を引き延ばすリハビリをする」「顎関節症を悪化させる生活習慣を改める」などのケアが勧められます。

このように、簡単に治療できる方法も多いです。自然に治るかなどと思わず、気になることがあれば一度歯科医院で相談しましょう。初期症状であれば、比較的早く改善します。

顎関節症は軽度のものまで含めると、多くの人が経験するありふれた症候群であり、一時的に症状が出る程度で自然に治ることも多いことから、実際にその中で治療が必要となるものは症状を自覚した人の5%程度と言われています。顎関節症には生活習慣も大きくかかわっていることから、もしも顎関節症と思われる症状があれば、まずは顎関節症を起こすような習慣があるならそれをやめてみましょう。もしやめても改善が見られない場合には一度歯科医院に相談されることをお勧めします。

小林 保行 歯科医師/キーデンタルクリニック院長

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こばやし やすゆき / Yasuyuki Kobayashi

2004年東京歯科大学歯学部卒業、表参道の総合歯科医院に勤務。2006年市谷の歯科医院にて副院長として勤務。2008年に赤坂見附駅から徒歩1分の場所にキーデンタルクリニックを開院しました。開院以来、「確かな技術で納得の治療を」モットーに、あごや歯の場所を細かく分析をし、歯だけでなく口回りを総合的に診断。現在はムシバラボというサイトを立ち上げ、歯や口周りの情報を発信。主な資格はDHA岩田セミナー認定医、総合治療セミナー「一の会」認定医、クリアアライナー矯正認定医、日本顎咬合学会所属、日本インプラント学会所属、消防庁認定、救命技能講師修了。

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