プレステVRは、ポケGOより格段につまらない ソニーは決算が順調でも創造性に乏しい

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これだけ高性能な電気製品である。開発コストがかかり、電子部品代も高いと容易に推測できる。プレステVRの税抜き価格は4万4980円。税込み価格は4万8578円だから、ほぼ5万円である。しかも、PlayStation 4(以下PS4)とつなげる必要があるため、プレステVRを楽しむには、PS4を買わなければならない。その価格は、最近価格改定があり安くなったものの、税抜きで2万9980円(税込みで3万2378円)だ。

今のようなマイナス金利政策をとらざるを得ないようなデフレ経済のなかで、ゲームを楽しむために、合計で8万円を超す娯楽電気機器を買う金銭的余裕のある人々は、そうは多くはないと思われる。

ソニー側(より正確に書くと、連結子会社のソニー・インタラクティブエンタテインメント)の発表では、第一弾、第二弾、第三弾の予約ともに速やかに完売ということだが、販売数は未公表なので、おそらく小出しに売っていき、損を抑制する手法をとっていると、筆者はみている。

あるのは高い技術だけ、ゲームの面白さに進化がない

任天堂の「ポケモンGO」はオリジナリティがある。すなわち、携帯電話のGPS機能をフルに活用し、それとARを組み合わせることにより、それまで存在しなかった「斬新な面白さ」を実現することを可能にし、世界の人々を魅了した。

では、プレステVRにオリジナリティはあるか?答えは残念ながら、「ノー」である。期待が大きいだけに、どうしても厳しい言葉になってしまうが、筆者の感覚からすれば、昔からあったVR技術を現時点で可能な限り進化させ、家庭用ゲームに採用しただけのことである。ソニーお得意の「高精細で映画的なゲーム」への没入感を高めるために、採用したのがVRの技術であったということだけのような気がする。

技術をゲームに活用するのは良い。しかしながら、それによって、ゲームの面白さを異次元に増幅させることができなければ意味がない。そのように増幅させることによって、より多くの人々を魅了することができるのである。

ただ単純に「昔よりも格段に進化したVRをゲームに採用しました、高精細な映画の中に入り込む体験ができて楽しいでしょう?」だけでは、本来のゲームの面白さにはつながらない。

今のソニーの課題は、オリジナリティ、ひとひねりした工夫、クリエイティビティである。たまたま、現在、欧米でPS4の販売が好調なため、「今、ソニーの中で最大の成長牽引事業」なのであろう。しかし、これらの課題を解決していかない限り、成長分野と位置付けたゲーム事業のさらなる拡大は難しいと思われる。

矢田 真理 立命館大学ゲーム研究センター客員研究員

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やだ まり / Mari Yada

1984年慶應義塾大学経済学部卒業、同年野村総合研究所入社、その後外資系証券会社、長銀総合研究所、野村證券などを経て、2012年に立命館大学衣笠総合研究機構ゲーム研究センター客員研究員就任。1991年から、「新規成長企業群」調査の一環で、ゲーム産業の調査を開始し、1996年には単著「ゲーム立国の未来像」(日経BP社)を出版。現在、グローバルにゲームの調査研究を行いつつ、資産運用セミナーの講師や日本のゲーム産業/企業動向に関するインタビュー対応(海外投資家を含む)、資産運用、IPO支援関連等のスポットコンサルティングなども行っている

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