17歳桐生の100m9秒台は非現実的?

高校生スプリンターから考える「再現力」の重要性

17歳の怪物スプリンターは、9秒台を達成する可能性は?(写真:アフロ)

日本人として“未知の領域”に突入するか──。桐生祥秀(洛南高校)という17歳の怪物スプリンターの登場で、今、日本陸上界は“大きな壁”を打破できるかに注目が集まっている。早ければ6月7~9日に開催される日本選手権で、日本人の「100m9秒台」という“夢の瞬間”が見られるかもしれない。

桐生は昨年の秋、100mでユース世界最高記録(17歳以下)となる10秒19をマークした選手だ。話題をさらった高校生は、ひと冬超えてさらにパワーアップ。今季は4月29日の織田記念100m予選を10秒01で駆け抜けて、陸上関係者の度肝を抜いた。

この記録は19歳以下のカテゴリーであるジュニア世界記録と同タイム(※国際陸連が定めた風速計を使用していなかったため、現在「公認」申請中)で、シニアのカテゴリーに当てはめても、日本歴代2位という驚異的なタイムなのだ。

日本記録は1998年のバンコク・アジア大会で伊東浩司が樹立した10秒00。2001年には長い間、日本のスプリント界を引っ張ってきた朝原宣治が10秒02、2003年には同年のパリ世界選手権200mで銅メダルを獲得した末續慎吾が10秒03で走るなど、日本人スプリンターは2000年前後に何度も「9秒台」に肉薄した。

そこから、日本勢はしばらく停滞したが、昨年20歳の山縣亮太(慶大)がロンドン五輪で自己新となる10秒07をマーク。そして、桐生という怪物の出現で、日本人に再び「9秒台」のチャンスが巡ってきた。

高校時代を超えられない理由

アジア勢では、2007年にサミュエル・フランシスが9秒99で走り、初めて10秒の壁を突破した。しかし、彼はナイジェリアからカタールに国籍を移した選手。黄色人種で100m9秒台の景色を見た者はいない。もし桐生が9秒台に突入すれば、アジア民族として初めての快挙となる。

17歳という年齢と、タイムの上昇率。そして、専門家が絶賛する才能を目の当たりにすれば、多くのメディアが「9秒台」の可能性を声高に報道するのは当然のことだ。今の桐生には日本国民の視線を集めるだけのバリューがあるし、期待値も大きい。桐生の未知なる可能性を考えると、あと0.02秒という記録の短縮は、時間の問題のように感じる人も多いだろう。

しかし、冷静になって、見方を少し変えると、桐生の100m9秒台は簡単なことではない。むしろ、「難しい」と言ったほうが“正解”なのかもしれない。

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