国内”勝ち組”の日立、次は世界に挑む 世界のインフラ市場を目指すが、そのハードルは高い

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子会社からは恨み節も

実のところ、いくつかの数値目標を更新した以外、グローバルメジャープレーヤーになるという中計の方向性に新鮮さはない。ただ、その道筋はより鮮明に打ち出されている。

たとえば、11年度にスタートしたグループ横断でコスト削減を目指す「日立スマートトランスフォーメーションプロジェクト(スマトラ)」。中西社長自ら強化本部長を務め、グループでの資材一括仕入れや、製品設計の見直しによる部品の共通化、物流費の削減などを進めてきた。

もともと日立はグループ企業の独立性が高かっただけに、子会社からは「自前でやっているコスト削減と大して変わらない。作業が大変になっただけ」と愚痴が漏れる。それでも2年間で約1100億円のコスト削減を実現している。

今後は国内中心だったスマトラを海外まで徹底することで、15年度までにコスト削減効果を4000億円まで積み上げる。経理や資材調達などの間接部門は全世界で数カ所に集約し、徹底的に業務を効率化する。子会社の現地法人も対象で、ますます日立本社の統治力は強くなる。

中西社長は「(担当役員には)赤字にならなければいいという考え方なら、あなたの事業はなくなる。グローバルな競争に耐えられる事業に仕立ててくださいと言っている」と容赦ない。昨年11月には子会社の中でも別格視される“御三家”の日立金属と日立電線の統合を決めている。この先も、求められる成果を上げられない子会社や事業には、再編や売却が待ち受けている。

加速する中西改革に対し、一部で不満の声もなくはない。それでも、正面切っての反論は今のところ上がっていない。08年度に製造業で過去最悪となる7873億円の巨額赤字を計上した日立を、10年度、11年度と2期連続の最高益更新に導いた手腕への評価は高いからだ。

再建の立役者から、成長の牽引役へ、自らに高いハードルを課した中西社長の第2ラウンドが始まる。

(撮影:ロイター/アフロ =週刊東洋経済2013年6月1日

前田 佳子 東洋経済 記者

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まえだ よしこ / Yoshiko Maeda

会社四季報センター記者

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