日銀の政策は資源配分の効率を低下させる 超低金利政策は何をもたらしたのか

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デフレからの脱却を実現するために日銀が行っている金融緩和政策によって、市場の金利は著しい低水準となっている。低金利は住宅建設にも追い風となっており、8月の住宅着工戸数(季節調整値)は年率で100万戸を超えた。人口の減少が続くと予想されている日本では、この水準は好調といってよいだろう。

持ち家と、分譲の着工戸数が横ばい圏を脱せずにいるなかで、2013年頃から貸家の着工戸数が目立って増えており、2016年に入ってからは更に加速が目につく。2015年から相続税の基礎控除が縮小されたため、相続税対策として貸家を建てる動きが続いてる中で、マイナス金利の導入による低金利が追い風となって貸家の着工は前年同月比9.9%増と10カ月連続で前年比で増加を続けている。

需要側から見てそれほど貸家が必要なのか

2014年度に消費税率を8%に引き上げた際には、2017年10月から税率を10%に引き上げる予定だったが、今年6月に安倍総理は自ら引き上げ断念を表明した。増税が見送りになったことで大規模な駆け込み需要はなくなったと見られる。増税延期の発表前に建設が決まっていた住宅の影響はそれほど大きなものではなく、低金利が最近の貸家の好調に強い追い風となっていることは確かだろう。

第二次大戦後の日本では住宅が不足していて、1958年には日本の住宅数は1793万戸と総世帯数1865世帯を下回る状態だった。しかし、2013年には住宅数は6063万戸となって世帯数の5246万世帯を大きく上回っている。1958年にわずか2%に過ぎなかった空き家率も、2013年には13.5%に上昇し、普段誰も住んでいない空き家は820万戸にも上る。

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