ユニクロ顔負け、急成長するジーユーの秘訣 日本発ファストファッションは化けるのか?

拡大
縮小

ジーユーはユニクロ同様、企画・生産・販売すべてを自社で一気通貫して手掛けるSPA(製造小売業)だ。最新のトレンドをとらえた「最旬リアルファッション」を日本人向けにスピーディに商品化。生地はユニクロとは別に独自に調達する。商品開発体制を強化するために今春にはロンドンに研究拠点を立ち上げた。「ジーユーは日本発のファストファッション。このコンセプトはありそうでなかった」(柚木社長)。

今年の秋冬商戦については、コートとカーディガンの良さを生かした「コーディガン」などの最旬商品をユニクロより低価格で展開する。店舗展開は国内で341店舗(2016年9月30日時点)まで拡大した。今期も年間40店前後の出店を計画しており、店舗の大型化にも順次取り組む。

顧客層拡大へメンズやキッズを強化

10月13日の決算会見で売上高1兆円を目指すことを宣言した柚木治社長(撮影:今井康一)

ただ柚木社長は「これまではラッキーな面もあった」と率直に語る。定期的にヒット商品に恵まれ、拡大路線に伴うひずみは隠されてきた。今後さらなる成長を目指すためには、意識的に人材育成や店舗運営の効率化などに取り組まなければならない。

商品面ではこれまで意図的にレディース向けを中心に展開してきたが、今後は顧客層の拡大のため、メンズやキッズ商品の強化を進める。そして国内の成長を担うもう一つの取り組みが、ネット販売の強化だ。ジーユーはユニクロより一足先に店舗のチラシを全廃し、デジタル会員を軸にした販促に移っている。顧客層のネットに対する親和性も高い。今後はネット販売の比率を現在の5%から中期的に30%まで拡大させる方針だ。

そしてさらなる成長に向けた最大の課題は海外展開だ。ジーユーの海外展開は2013年にはじまったが、まだ11店にとどまる。来春香港に出店する2店舗を皮切りに、3年後には50店体制を目指す。その過程では、先行する「H&M」や「ZARA」などグローバルブランドと競合する場面も出てくるだろう。

「ファッションは大衆化するとファッションじゃなくなると言われる。そんな常識を越えたい」と話した柚木社長。これから真の実力が問われることになる。

菊地 悠人 東洋経済 記者

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

きくち ゆうと / Yuto Kikuchi

早稲田大学卒業後、東洋経済新報社に入社。流通・小売業界の担当記者を経て2017年10月から東洋経済オンライン編集部。2020年7月よりIT・ゲーム業界の担当記者に。

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT