「毎日同じ服はおしゃれ」が招く百貨店不況 ジョブズが黒Tとジーンズを着続けた理由

拡大
縮小

そもそも、働く女性は百貨店に洋服を買いに行く時間がない。そして、ネット通販を使えば翌日には買ったものが届くのです。一度「このデザインの服が良い」と決めて、それを定期的に買い足していくという消費行動をするのならば、敢えて店に行く必要はなく、ネット通販で十分なのですから。

同じものを買い続ければネットでも不都合はない

私も、実は下着をネットで買っています。以前は百貨店で買っていたのですが、同じものを買い続けているのでネットでも不都合はないわけです。ただ、日本人はやはり店頭で物を触って確かめたいという傾向があるので、ショールームとしての店頭は必要かも知れません。 

書影をクリックすると、アマゾンの販売ページにジャンプします

こうした状況下において、店舗で新品の洋服を売って儲けていくのは至難の業です。わざわざ店舗まで足を運んでもらうためには、「売る」という行為をイベント化する必要があります。例えば、百貨店のカリスマバイヤーが各地で買い集めてきた自分の古着を販売してみる、あるいは、有名なアイドルの私物を販売するなど、どうでしょう。このように、その時その時の「一回性」をアピールしていかないと客が集まらないでしょう。

ただ、日本人の服装はまだ多様なので、まだアパレルメーカーはもっています。アメリカに行くと、服装はもっと画一的です。都心では、みんな黒いスーツにストライプのネクタイ、郊外へ行けば、皆「ランズエンド」(米国のカジュアル衣料通販)で買った同じようなポロシャツと半ズボンを着ています。人種が多様なので気づきにくいですが、実は髪型も似ています。そう考えると、日本でも今後はもっとシンプルに、もっと同じ服になっていく可能性があるかも知れませんね。

三浦 展 社会デザイン研究者

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

みうら あつし / Atsushi Miura

カルチャースタディーズ研究所主宰。1958年生まれ。1982年に一橋大学社会学部卒。パルコに入社し、マーケティング誌『アクロス』編集室。1990年に三菱総合研究所入社。1999年に「カルチャースタディーズ研究所」を設立。消費社会、家族、若者、階層、都市などの研究を踏まえ、新しい時代を予測し、社会デザインを提案している。 著書は、80万部のベストセラー『下流社会』のほか、『第四の消費』『日本人はこれから何を買うのか?』『東京は郊外から消えていく!』『毎日同じ服を着るのがおしゃれな時代』『あなたにいちばん似合う街』など多数。

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT