国際テロの資金源「象牙」の違法取引を許すな 日本が取り組むべきことは何か

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野生の象が殺され、人を殺す資金源になっています(写真:Hatty / PIXTA)

象牙の違法取引が世界中で問題視されています。この7年間で野生のアフリカ象が約30%、1万頭程度も減少。象牙のための密猟がテロリストの資金源になっています。象を殺し、それをテロの活動資金にしてテロを起こして人間を殺しているのです。

10月5日まで南アフリカ・ヨハネスブルグで行われていたワシントン条約の締約国会議で、さらなる象牙市場の規制の必要性が議論されました。ワシントン条約は批准しているものの、既存の象牙の流通市場がある日本や中国などの消費国の流通市場の閉鎖が検討事項のひとつとなりました。中国では、密輸された象牙が流通市場に出回ったことが非難され、オバマ大統領が習近平国家主席に直接国内の象牙市場の廃止を訴求。それを受けて、中国は象牙の流通市場の閉鎖を約束しました。

反面、日本の既存の象牙の流通市場は、十分管理されているとして日本代表は流通市場の廃止には反対の立場をとりました。世界的に日本が最も消極的な印象を与えてしまった懸念はぬぐいきれませんが、1990年以降、ワシントン条約で違法な象牙の輸入を禁止して以来、条約で認められた2度の例外的な輸入以外、象牙の正式な輸入は行われていません。

野生生物取引監視NGOの「トラフィック」の報告書(2016年春公表)によると、1989年には200億円程度あった象牙の国内市場規模は2014年には20億円程度に縮小しました。取り扱い業者の数も年々も減少し、1989年に76社だったものが、2014年には37社と半減しています。

市場閉鎖は違法取引の防止にはつながらない

これは象牙の輸入禁止を受け、ピアノの鍵盤における象牙の使用を取りやめたほか、企業や公共機関でも象牙の印鑑の使用が激減したことが大きいようです。そのため、印鑑の需要以外の装飾品の需要は激減。かつて1989年には印鑑以外の需要が国内シェアで45%にも上ったのに対して、現在は20%にまで減少し、80%が印鑑としての需要であることがわかります。その意味で、わが国の象牙の密猟の防止に向けた取り組みは十分評価できるでしょう。

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