アジアから「グローバルエリート」を目指す道 狙いやすいのは「アジアリージョナル」

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グローバルでの大競争時代がやってくる前に

このように、あえて日本の環境を飛び出し、日本人のメリットがまったく生かせない場所で、身ひとつで勝負しようと考える人が出てきました。なぜ、彼ら、彼女らはグローバルな世界を目指すのでしょうか。

ひとつには、彼ら、彼女らには、「日本という特定の市場に縛られない、グローバルに通用する力を身に付けたい」という思いがあります。

さらには、せっかくなら、日本だけではなく、世界のいろいろな場所で、さまざまな人々に影響力を及ぼせるようなリーダーになりたいという志があるようです。日本で日本人だけにしか通用しないリーダーシップではなく、多国籍の人材を率いて、より大きな課題を解決してくことのできる人材になりたい。そういう気持ちがくみ取れました。

そういう思いがあるからこそ、彼ら、彼女らは、あえて厳しい道に挑戦しているのだと思います。

日本には、まだ巨大な国内市場という安全・安泰な場所があります。そこで仕事をしているほうがよっぽど楽です。

野球でいえば、日本のプロ野球リーグみたいなものでしょうか。あえてメジャーリーグにいかなくても、日本のプロ野球でも十分おカネが稼げるし、高い地位も得られます。それでも、メジャーリーグに挑戦する選手が出てくるのと同じかもしれません。

そして、環境もプロ野球に似ています。日本人選手は、国内のプロ野球リーグで十分に経験を積んでから、満を持してメジャーデビューができる。ビジネスパーソンの場合も、日本人の場合、大学を卒業して、日本国内の企業(外資系含む)で20代の基礎が固まるまでの間を、熾烈な競争に巻き込まれることなく、それなりのペースでじっくりとキャリア形成ができます。

これは大きなメリットです。そして、今は、ステップアップしやすいアジアでのグローバルジョブのポジションも出てきています。なんと幸いなことでしょうか。

国内プロ野球リーグに相当する国内のビジネス環境が存在せずに、大学卒業後、いきなりメジャーリーグに挑戦しなくてはならないような途上国のエリートたちに比べたら、現実的にははるかに有利なのです。

ただ、グローバル化が遅れている日本国内の状況が10年も20年も続くようだと、日本国内で働いていたキャリアがまったく評価されなくなる時代も来てしまうかもしれません。そうなったら、途上国の学生と一緒で、子どもの頃から英語で教育を受け、米国やシンガポールの大学を卒業して、やっとグローバル・キャリア・トラックに乗ることができる、ということになってしまうかもしれません。

現在は、日本・アジア・グローバルのキャリアを連続してつなげることができる。この有利な状況が続いているうちに、グローバルな世界との接点を持ってキャリアをつくっていく。日本の若者たちは、そのための道筋を探っていくべきではないか。これは、私たちが繰り返し述べていきたいことです。

大石 哲之 作家・コンサルタント

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1975年生まれ。慶應義塾大学卒業後、外資系コンサルティングファーム、インターネットスタートアップ・エグゼクティブサーチファームの創業などを経て、現在は海外に拠点を移し、投資家としてプライベートな活動を行っている。著書に『3分でわかるロジカル・シンキングの基本』(日本実業出版社)、『過去問で鍛える地頭力』(東洋経済新報社)など20冊以上。

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