今回のハート、ホルムストロームの2人もこの流れの中に位置づけられる。特にその性格が強いのが、不完備契約理論を構築したハートだ。ハートは、人々が将来起きることをすべて事前に知って契約を結ぶことはできないことを指摘した。
たとえば、企業のために新技術を開発している研究者の報酬契約を考えてみよう。R&D(研究開発)の結果は不確実であるため、事前に契約でイノベーションがどう起きるかを具体化できない。さらに事後的にも、新技術の質や企業収益に与える影響額を正確に計測するのは難しいだろう。日本でも発明の対価をめぐって社員研究者と企業の訴訟が起きた例があるが、このようなときの報酬契約はどう考えればよいだろうか。
財産権の配分がインセンティブに与える影響
避けたいのは研究者、企業とも将来の取り分がはっきりしないため、研究開発が促進されず、投資が過小になることだ。ハートは、このような不確実な将来に向けての契約では、将来に誰が決定権を持つかを財産権の付与によって事前に決めておくことが重要だと説明した。
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