しまむらは「衣料品フロア」の救世主になるか 売れすぎパンツの陰で進む出店立地改革

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しまむらはこれまで、地方の幹線道路沿いに大型の路面店を出店してきた。商品の価格が安くても、賃料水準が安い郊外を中心に運営することで、成長を維持してきた。そのため、集客力があっても、賃料が相対的に高い地方や都市部の総合スーパーやショッピングセンターへ進出する例はほとんどなかった。

だが、近年は方針を転換。2011年に総合スーパー、「ゆめタウンみゆき店」(広島市)へ初出店。2013年11月にはヨーカ堂系ショッピングセンター「ショッピングプラザ鎌ヶ谷」(千葉県鎌ケ谷市)にも出店した。

商業施設の開拓が焦点に

野中正人社長は出店戦略について何度も「全方位外交」と口にした(記者撮影)

背景にあるのが、西友やイトーヨーカドーといった総合スーパーの衣料品部門の不振だ。

特に西友は自前主義と決別、この7月には「西友与野店」に「しまむら」をオープンさせたように、自社の衣料品売り場に続々と誘致を進めている。

総合スーパー側から好条件の出店要請が舞い込むようになっており、着実に出店事例を積み重ねている。実際に上期に出店したしまむら10店のうち、4店舗がこうした業態への出店だった。今月10月13日にも船橋市の商業施設「ビビット南船橋」1Fに千葉県内最大級のしまむら店舗をオープンする予定だ。

しまむらは今期、グループ全体で約70店の出店を計画しているが、数年以内に年間100店舗までに引き上げる見込みだ。その際に、比率が高まるのが総合スーパーやショッピングセンターだ。「空いた区画は貪欲に取っていきたい、まさに全方位外交だ」(野中社長)。

ただ、懸念材料もある。既存店売上高の前年対比は8月、9月と2か月連続で前年を下回った。特に9月は前年同月比86.2%と2ケタ減だ。「度重なる台風直撃などの天候不順の影響」(会社側)。「GU」や「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングなどが同価格帯の商品を投入するなど、競争も激しくなってきている。

野中社長は2015年度にグループ2000店舗を達成したことで、長期的な目標として3000店舗の実現を掲げる。はたして、しまむらの快進撃はこのまま続くのか。コア商品でヒットを出し続けられることがカギを握る。

菊地 悠人 東洋経済 記者

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きくち ゆうと / Yuto Kikuchi

早稲田大学卒業後、東洋経済新報社に入社。流通・小売業界の担当記者を経て2017年10月から東洋経済オンライン編集部。2020年7月よりIT・ゲーム業界の担当記者に。

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