中国の曲がり角、女子の「結婚観」に変化発生 将来的に社会、経済に影響も

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中国は公式のメディアで結婚を強調し、理想の相手を待ち続けないよう女性に訴える。しかし、人口動態と社会的な規範の変化により、その言葉も響かなくなっている。

昨年は1200万組のカップルが結婚の届け出をしたが、その数は2年連続での減少となった。一方で、離婚を届け出た夫婦は380万組で、10年前の二倍以上の水準になっている。

婚姻減少の要因としては、中国が行ってきた一人っ子政策が挙げられる。この政策は35年間継続された後、今年一月に正式に終了したが、出生率の低下に拍車をかけることになった。この政策の結果、結婚を考える年齢である20代の人々の割合は、20年前と比較し少なくなっている。さらには、男の子を望む家庭が多いため、中国では男性のほうが多く、結婚に関する状況も複雑になっている。

こうした潮流により、何百年も前からの家族についての概念も揺るがされる。中国では、見合い結婚はほぼ行われなくなったが、今でも親は子どもの結婚に深く関与している。結婚相手になりそうな人を探し求め、休暇で帰省した子どもたちに、結婚の予定について問い正す。

サンの母親のリュウは、ふさわしい人が現れるまで結婚を待つべきだという娘の考えを受け入れるが、それでも娘が結婚相手を見つけることを望んでいる。「彼女には幸せになってもらいたい。それに、家族がいたほうが安定した生活ができると思う」と、リュウは話す。

消費は減り、貯蓄は増える

経済面から考えると、婚姻の減少は諸刃の剣だ。一般的に独身者は、結婚した夫婦に比べて住宅の購入は少なく、子どもも少なく、玩具などの製品の購入も少ない。そうなると、輸出と政府の大型投資に依存した経済を補うために、財布の紐が固い中国人を米国型の消費者に変えようとする政府の努力もより困難になる。

加えて、婚姻の減少により、中国の消費者は銀行預金やタンス預金を増やす可能性もある。息子の結婚を考える親は、息子の結婚前に家を買って経済的な安定を与えようとする。前出の北京大学チャン教授は、もし花嫁を見つけるのが難しいのであれば、より大きな家が買えるよう、親は貯金の額を増やすかもしれないと言う。

一方で、いまだ中国では男女の賃金格差が大きい中、2014年には大学生全体のうち、半分以上を女性が占めるようになった。10年前は、女性の割合は46%だった。大学院でも学生の半分近くが女性だ。

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