メルセデス・ベンツ、中国に小学校を作る 小学校の名称に企業名??

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日本の製品は、高い品質を誇りながら、中国マーケットにうまく食い込めていない。その最大の理由は、ブランド戦略の甘さにある。このコラムでは、北京電通に7年駐在し、グローバル企業のブランド戦略のコンサルティングを手掛ける著者が、中国人の心をつかむためのブランド創りを解説。ビジネスの現場で起きている事実をベースに、実践的なブランド戦略を発信する。
中国で高い人気を誇るメルセデス・ベンツ(写真:AP/アフロ)

グローバル企業の社会貢献

メルセデス・ベンツは中国でのCSR活動に大変熱心で、2010年には「Mercedes-Benz Star Fund(中国名: 梅赛德斯-奔驰 星愿基金)」という3000万元の基金を設立して、環境保護、文化・スポーツ振興、運転技術向上などの分野で活動しています。

また、この基金によって、販社やディーラーを含む全グループ企業のCSR活動を一元化しています。通常、大企業では統括会社による冠事業以外は各地の現地法人が個々に活動しているケースが多く、全体としての貢献度がわかりづらいケースが散見されますが、メルセデスはグループの力をうまく結集しています。

そして、この基金の存在がタイムリーな社会貢献を可能にしており、たとえば今年4月20日に四川省雅安市で起きた大地震の際には、発生後24時間以内に2000万元の寄付を発表しました。この対応は、アップルと並んで最も迅速かつ大規模なものでした。

中国ではネット上などで企業の寄付金額ランキングがすぐに発表されます。金額の多寡よりも善意と志を尊ぶ日本人の感覚とは相容れないのですが、多くの中国人が金額を物差しに企業の中国社会への貢献度を判断しているのが現実です。2008年5月の四川大地震の際には国営企業をはじめとする中国の大企業が多額の義捐金を送りましたが、雅安市の支援にはサムスン、アップル、ボルボ、メルセデスなどのグローバル企業が積極的に動いたのが目立ちました。

このメルセデス基金が、2010年5月に四川大地震の被災地に小学校の新校舎を建設しました。開校セレモニーの後にお披露目された小学校の正門には「什邡市梅赛德斯-奔驰小学」と大書されていました。日本語で書けば、「什邡(シーファン)市メルセデス・ベンツ小学校」です。そこまでやるか、と企業のブランド戦略に驚かれる方が多いと思います。

もちろん、寄付によってできた校舎ではありますが、中国では学校名に企業の冠をかぶせることが受容されるのが、やや不思議な感じがします。通う児童はメルセデスの名前を誇らしく思うのでしょうか。

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