サイゼリヤは、なぜ低価格を続けられるのか 堀埜一成社長が明かす「科学的アプローチ」
――消費が冷え込み、デフレ再来という声も聞こえています。
「デフレ」という言葉については、いろいろと疑問に思っている。うちの会社は「デフレの申し子」といわれるが、それは心外だ。そもそも本当にデフレという状況なのかな。
デフレというのは需給のバランスが悪化して値下げをする。その結果、付加価値が増えず、すべてがシュリンクする。そういう状態でしょう。うちは店数も投資も伸ばしているから、デフレの申し子というのは当たらない。
「低価格帯の市場規模がもともと大きい」だけ
――それでも世の中の低価格志向が追い風となっているのは確かでは。
低価格「志向」が強まっているのではなくて、低価格帯の市場規模がもともと大きいということ。一方で高単価の外食市場は規模が小さいので、あっという間に飽和状態になる。そうすると価値を下げるか、我慢して自分の首を絞めるかのどっちかしかない。価値、品質を下げている会社はお客さんから見透かされる。
少子高齢化といわれるけど、大切なのは市場規模をどう広げていくか。今は生産年齢人口、つまりいちばん消費する人たちの数が減っている。しかもその層はあまりおカネを持っていない。高齢者はおカネを持っているけど、将来が不安で使おうとしない。だからこそ若者にも高齢者にも高い頻度で来てもらえるメニューを出していけば、市場規模は広がる。そうやって寝ている市場を掘り起こせば、「デフレ」と言われる状態だって解消できる。
――2014年の消費増税のときでもメニュー価格の大半を据え置きました。今後も価格は上げませんか。
コストを削ったり、(同じコストでも)商品の価値を上げたりする技術があるうちは値上げしない。そもそも価値=バリューというのはファンクション(F)、すなわち提供できるメリットと、コスト(C)で決まる。まずは分子のFを上げ、合わせて分母のCを下げることが大事だ。
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