コロンビア内戦、和平合意が否決された理由 国民投票で想定外の結果に

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コロンビアでは2日、反乱軍との和平協定合意に関する国民投票が開かれた(写真:Fredy Builes/ロイター)

25歳のグラフィックデザイン専攻の学生、ローラ・ソラノは、コロンビアの指導者たちが同国最大の反乱軍との和平協定に合意することを支持していた典型的なコロンビアの若者だ。

しかし、10月2日に投票に行ったとき、彼女の中である疑問が浮かんだ。自分が幼かった頃、反乱軍は家族を恐怖に陥れた。彼らが裁かれることなく社会に復帰することを、はたして自分は許すことができるのだろうか。

結局、約50人いる彼女の親族のほとんどは、2日の国民投票で和平合意に「反対」の票を投じた。

世論調査を正反対の結果に

和平合意支持者の僅差での敗北は中南米諸国に衝撃を与えた。コロンビアで52年間続く「コロンビア革命軍」(FARC)との内戦がようやく終わることが確実視されていたからだ。

実際、ここ数カ月の世論調査では、和平合意の支持者が圧倒的多数だと見られていた。この結果に自信を得たコロンビア政府は、投票が行われる前に世界の指導者たちの前で、歴史的とも言える平和協定の公開署名を行っていたほどだ。

にもかかわらず、一体何が起こったというのか。

一つは、世論調査の結果に安心しきった政府が、国民の投票を促すのに失敗したことが挙げられる。結果、もともと支持者が多かった地域で投票率が低迷した。加えて、フアン・マヌエル・サントス大統領が和平達成のために政治的な賭けに出たが、彼の支持率の低さがかえって足を引っ張ってしまった。さらに最悪なことに、支持者が多い北部地域を大型ハリケーン「マシュー」が襲い、多くの有権者が投票日に家から出られなかった。

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