日本vs韓国「空港鉄道」はどちらが便利か 仁川は高速鉄道乗り入れでも弱点がある

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空港鉄道の仁川国際空港駅。空港ターミナルから離れており、大きな荷物があると面倒だ

直通列車は専用ホームから発車する。全車指定席となっているが、満席になることはほとんどなく、乗車前に座席指定の必要性すら感じない。シートの座り心地はあまりよくなく、特にシートの前後間隔が狭い。むしろロングシートの一般列車の方が快適に思えてしまう。

特に日本人にとって抵抗があるのは、シートが回転できないことと、シートカバーが乱れているなど車内に清潔感を感じないところである。昔の新幹線のように、座席の半分は進行方向と逆向きのままになるのだ。座席数を増やすためにシートの前後間隔を狭くしたことで回転が難しくなったと推測できるが、そういった点も含めてせめて自由席にするべきだと考える。

このシートだけでも、成田エクスプレスや京成スカイライナーなどと比べると正直なところ見劣りしてしまい、快適な3列シートのKALリムジンとの差は歴然としている。一等車もないことから、ゆったり移動したい人には直通列車は不向きである。

一般列車の方が1時間あたり4~7本と本数も多く、ソウル駅の2つ手前の弘大入口駅で地下鉄2号線に乗り換えれば、ロッテ百貨店がある市庁駅や乙支路入口駅にもスムーズにアクセスすることができる。それでいて地下鉄も含めて片道600円程度で移動できるので逆に便利かもしれない。車両も直通列車よりも綺麗で清潔感がある。

鉄道の利便性は成田に軍配

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KALリムジンの料金は鉄道より高いが、利便性の高さで支持されている

だが、やはり最大のネックは、空港の到着ロビーから仁川国際空港駅までの距離が離れているところだ。成田国際空港では、第一ターミナルに成田空港駅、第二ターミナルに空港第2ビル駅が至近距離で直結しており、その違いは大きい。また到着ロビーにJRと京成電鉄の時刻案内が掲示されている点も成田空港の方が利便性が高い。

さらに終着駅であるソウル駅もかなり地下深いところにホームがあり、大きな荷物がある時には不便だ。特に地下鉄のソウル駅までは乗り換えだけでも15分程度の時間を要する。成田エクスプレスが発着する東京駅の総武・横須賀線地下ホームも深いが、A’REXのソウル駅ほどではない。

そうなると、明洞などからは結果的にKALリムジン(明洞のロッテホテルの場合、片道1万6000ウォン)などバスを利用する方が便利なのだ。料金は鉄道の倍くらい高いが、KALリムジンは利用者に支持されている。

しかしながら、時間帯によってはソウル市内中心部の渋滞は激しいことも多く、その点で時間が読める鉄道はありがたい存在である。仁川国際空港駅、ソウル駅の双方で、歩く距離が長い点が改善されればもっと利用しやすくなるだろう。

2014年6月からは1日10本程度であるが、高速列車「KTX」の乗り入れも開始され、仁川国際空港からソウル駅での乗換なしに釜山や大田、大邱(東大邱)などへも行けるようになった点などは評価できる。だが、現状では鉄道利用の利便性においては成田空港に軍配が上がる。もっと使いやすい空港アクセスにしてほしいと願う利用者も多いだろう。

鳥海 高太朗 航空・旅行アナリスト 帝京大学非常勤講師

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とりうみ こうたろう / Kotaro Toriumi

1978年千葉県生まれ。成城大学経済学部経営学科卒。食品会社、コンサルタント、城西国際大学観光学部助手を経て現職。専門は航空会社のマーケティング戦略。利用者・専門家の双方の視点から各社メディアを通じて情報発信をしている。

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