日本は北朝鮮の最新ミサイルを迎撃できない 

望みはアメリカの抑止力

日本政府は以前から、北朝鮮が2010年代のどこかの時点で、ロフテッド軌道でミサイルを撃てるようになると予想。米国と高度1000キロ以上に到達するSM3改良型の共同開発に取り組み、17年度から量産に入る計画を立てていた。「北朝鮮のミサイル開発は予想していたよりも少しペースが速い」と、別の自衛隊幹部は言う。

防衛省は来年度からSM3改良型を調達、PAC3の改修にも乗り出す。いずれも高度、距離、速度の向上を見込んでいる。しかし、「現時点では米国の抑止力に期待するしかないかもしれない」と、自民党国防部会のメンバーは語る。北朝鮮にミサイル発射をとどまらせるよう、米国の打撃力に依存するしか手はないとの考えだ。

点検中のイージス艦

迎撃態勢への懸念は数的な面でも指摘されている。9月5日のノドンとみられる弾道ミサイルは、同時に発射された3発が日本海上のほぼ同地点に落下した。日本側の対処能力を超える大量の弾道ミサイルを発射する「飽和攻撃」を思わせる撃ち方だった。「3発なら撃ち落とせるが、それ以上連発されると不可能」と、別の自民党関係者は指摘する。

軍事情報を分析するIHSジェーンによると、北朝鮮は700─1000発の弾道ミサイルを保有し、うち日本のほぼ全域を射程に収めるノドンは45%。米国防総省によると、ノドン用の移動式発射台は最大で50両を保有するという。

一方の自衛隊はSM3搭載イージス艦を4隻しか保有していない。複数の関係者によると、現在2隻が点検中のため、残り2隻を交代で弾道ミサイルの警戒任務に当てている。1隻が搭載するSM3は8発に過ぎない。「イージス艦のやりくりが最も大変な時期と重なってしまった」と、別の自衛隊幹部は言う。「在日米軍のイージス艦との協力が欠かせない」と話す。

自衛隊は弾道ミサイル防衛能力を備えたイージス艦について、現在の中期防衛力整備計画(中期防)が終わる2018年度に8隻まで増やす計画。それでも訓練や保守、他の任務を考慮すると、常時2─3隻程度しか展開できない。米軍は現在、日本周辺で10隻のイージス艦を展開している。

別の自衛隊幹部は「北朝鮮のミサイル開発は、ひたひたと進んでいる。こちらが能力を上げても、すぐに向こうも上げてくる」と指摘。「次の中期防で迎撃態勢を根本的に見直す必要があるかもしれない」と語る。

防衛省はSM3とPAC3の能力向上に加え、新たな迎撃ミサイルシステムの導入も検討している。PAC3より射程の長い「THAAD(サード)」を取得すれば、上層、中層、下層の三段構えの防衛体制を構築できる。陸上からSM3を発射する地上配備型イージスを選択すれば、大気圏外での迎撃を強化できる。しかし、直ちに決定しても配備されるのは数年後だ。

稲田朋美防衛相は日本の迎撃能力について記者から問われ、「ミサイル防衛の重要性は増してきている。北朝鮮の(開発)スピードなども見ながら、不断に検証していく必要がある」と説明。現在の能力で対応可能かどうかは明言を避けた。

 

(久保信博、ティム・ケリー 編集:田巻一彦)

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