北朝鮮の大学生も実は「出会い系」好き? 学生たちのオンラインネットワーク「平壌線」とは

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このような学生同士のネットワークは、2005年ごろから自然発生的に形成されてきたとRFAは言う。訪朝経験豊富なある在日コリアンは「確かに05年頃、光陽網の中に掲示板があって、そこで疑似恋愛を行う学生たちが増えたことがあり、今でもそんな学生がいるようだ」と打ち明ける。ただ、「一時期、あまりにも盛んになってしまって学生が勉強しなくなり、それが当局の逆鱗に触れたため、取り締まりが強化されたと記憶している」と、この在日コリアンは説明する。

この「平壌線」が形成されたきっかけは、なんとデジカメ。2000年代の半ばごろに取り締まりが厳しくなり、デジカメやDVDといった情報家電の北朝鮮内への搬入が難しくなった時期だった。ところが、高級幹部たちは税関をフリーパスで通ることができるため、禁制品であるはずのデジカメも流入。しかも、彼ら高級幹部たちの子どもの多くが通うのが金日成総合大学だった。

きっかけは、禁制品だった「デジカメ」

地方出身の金日成総合大学の学生が帰省した時などに、「大学でデジカメが手に入る」との話が広まり、「中央の大学生となんとか連絡を取りたい」という需要が拡散。その手段として一般電話がコミュニケーションツールとなり、さらにはネットも加わって学生同士のネットワークが形成、一種の商取引の空間になったようだ。現在では、パソコンなどを購入したい学生たちが、地元の市場(チャンマダン)での価格と中央での価格を調べたり購入をお願いしたりすることもよくあるという。

そうしてつくられたネットワークが、今では学生同士の情報交換の場になっているとRFAは指摘する。最近でも、2月に行った核実験による国連制裁の具体的な内容や、金正恩第1書記の動静といった政治的に敏感な問題もやりとりされているようだ。

ただ、あくまでも大学生同士のネットワークであり、そこで流布される情報には「主観が入って不正確なものも多い」とRFAは付け加える。自分の考えを、さも本当の情報のように流す学生も多く、そんな事情は日本や韓国のネット上と同じようだ。

福田 恵介 東洋経済 解説部コラムニスト

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ふくだ けいすけ / Keisuke Fukuda

1968年長崎県生まれ。神戸市外国語大学外国語学部ロシア学科卒。毎日新聞記者を経て、1992年東洋経済新報社入社。1999年から1年間、韓国・延世大学留学。著書に『図解 金正日と北朝鮮問題』(東洋経済新報社)、訳書に『朝鮮半島のいちばん長い日』『サムスン電子』『サムスンCEO』『李健煕(イ・ゴンヒ)―サムスンの孤独な帝王』『アン・チョルス 経営の原則』(すべて、東洋経済新報社)など。

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