日立、はるか先を走る「鉄道3強」超えの秘策 ベルリンの見本市で東原敏昭社長が激白

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日立はビッグデータの解析で何ができるのか。たとえば、駅構内の人の流れを検知して最適なダイヤを自動生成する。駅ナカ店舗の売り上げ予測にもつなげる。さらには駅だけではなく、町や地域の発展にもつなげたいという。かなり壮大な計画だが、「車両の値段だけで勝負していてはいずれ限界がくる」と、東原社長は本気だ。

今年5月、日立は自社開発のIoTプラットフォーム「ルマーダ」を発表した。大量のデータを解析し、課題に対して全体最適の解を導き出す。鉄道は電力会社や公共事業と並びルマーダが実力を発揮できる分野の一つ。他社製の車両にIT機器を搭載してそのデータをルマーダで解析するということもありうる。うまく運べば、日立は鉄道とルマーダの双方で稼ぐことができる。

ビッグスリーも同じ戦略をとる

英国を走る日立製高速車両「クラス395」

ただ、問題はこうした鉄道とITの融合を考えているのが日立だけではないということだ。たとえばスペイン国鉄は高速列車のデータをシーメンスの独自プラットフォーム「シナリティクス」で解析して、予防的なメンテナンスを実施している。ボンバルディアはITを活用して、鉄道と他の交通モードを組み合わせた最適な移動手段の構築を模索している。

また米GEは車両製造の売り上げではビッグスリーの後塵を拝すが、鉄道系システムには滅法強い。同社のIoTプラットフォーム「プレディクス」は日本の東京電力やLIXILも活用するなど普及が進んでいる。日立がこうしたライバルたちとどこまで競合できるかは予断を許さない。

前回、2014年のイノトランスにおいて、アンサルドブレダは高速鉄道車両と無人運転車両の展示を行なって注目を集めた。しかし、今回のイノトランスで日立グループは実車の展示を行なわなかった。「実車展示よりも、日立本体、英国、イタリア、そしてアンサルドSTSが一体化したことを示すことが重要だった」と担当者は説明する。つまり、今回はグループ全体を象徴する車両の展示ができなかったということだ。

次回、2018年のイノトランスで日立はどんな列車を会場に持ち込むのだろうか。高速列車か、あるいはセンサーを多数搭載した都市型車両か。来場者が驚くような車両であることを期待したい。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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