大詰めのIXI事件 浮かぶ業界の「無法」
システム開発会社のアイ・エックス・アイ(IXI、2007年1月倒産)を舞台とした架空循環取引の捜査が大詰めを迎えている。大阪市内のIXI本社など関係先は昨年2月末、大阪地検特捜部と証券取引等監視委員会による大掛かりな家宅捜索を受けた。有価証券報告書の虚偽記載などで旧経営陣の責任がどこまで追及されるのか、重大局面が刻一刻と近づいている。
「商流ファイル」で架空循環取引を管理
管財人団の調査などによると、不正取引が本格化したのは03年前半。架空の商品を取引先の間で転売して最後に自分で買い戻す循環取引が、その手口だ。間に入った業者への売買手数料が上乗せされた金額で商品を買い戻す必要があるが、IXIには売上高を水増しできるメリットがあった。成長を装った同社は04年に大証ヘラクレスから東証2部に鞍替え、公募で約24億円を調達。06年にも増資で約52億円を調達した。
参加企業の勧誘など不正実行を担ったのは、他社から集団移籍してきた元取締役ら数人。さらに営業担当の元常務も関与した。創業者の嶋田博一元社長はワンマン経営者だったとされ、一部の実行者は元社長の関与があった旨も供述している。
不正認識の有無は別として、架空循環取引には日本ユニシスなど大手企業も含め、少なくともIT関連企業約20社が参加。IXIは「商流ファイル」と称する取引経路を記したデータを作成、全体をコントロールしていた。商品が実在するかのように装うため、「営業支援システム」といった名称で264枚ものCDを用意するなど、手口は周到だった。
不正取引の規模が大きくなった05年半ば以降、IXIは「簿外債務スキーム」にも手を染めた。資金供給源として東京リースを引き入れ、日本アイ・ビー・エム(IBM)が取引に介在するようにも偽装した。最終的に東京リースの資金負担額は約150億円に膨張。IXIの売上高のほとんどが粉飾で、総額は1000億円近くに上る可能性がある。
実はこの事件には、重要な役割を果たした複数の社外協力者がいた。
その一人は、簿外債務スキームで伝票類作成に関与した元IBM部長だ。元部長は02年にIBMに中途入社、大阪事業所の公共部門などに在籍した。が、その傍らで「創研アイデアプロダクション」の屋号で副業にのめり込んでいた。もともとはデータ入力の内職だったが、IBM転職後、システム開発業者への資金繰り仲介業に目をつけた。
副業はやがて循環取引の口利きに姿を変え、IXIによる不正と結びついた。それにうまみを覚えたのか、元部長は05年末にIBMを退職して独立。架空循環取引に参加させた都内の会社からキックバックを受けるなど、行動は大胆になった。交際女性の生活費の工面や、IBMでの営業活動のためにつくった個人的借金の返済が、その動機だった。もっとも、そうした蓄財行為は昨年、所得税法違反に問われている。
もう一人の重要人物は元ネットワンシステムズ部長である。この人物がネットワンに中途入社したのは00年。剛腕社長で知られた佐藤一雄氏の側近的存在だったものの、同氏が04年6月に急死した後は、会社に内緒で副業に手を染めた。