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摘発されれば企業価値に甚大な被害
高まり続ける海外贈収賄というリスク
トムソン・ロイター・マーケッツ

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近年、海外で贈収賄を理由に摘発される日本企業が増えている。これは何も日本に限ったことではなく、贈収賄に関する法の厳格化は世界的なトレンドだ。もはや贈収賄が「あるかもしれない」という態度では甘い。「すでに存在している」という姿勢で臨まなければ、とんでもない事態に直面するかもしれない。

FCPA対応にかかるコストは弁護士・フォレンジックなど会社にとって重大な負担になり得る

―近年における世界の贈収賄をめぐるトレンドについてお聞かせください。

ベーカー&マッケンジー法律事務所(外国法共同事業)パートナー、弁護士
西垣 建剛
国際訴訟・紛争解決、国内外の上場企業の不正に関する調査、FCPAのコンプライアンス、製薬・医療機器メーカーのコンプライアンスを行う。不正調査、FCPAに関しては、多数のセミナーで講師を務め、積極的に情報発信している。2000年、ベーカー&マッケンジー法律事務所入所

西垣 FCPA※はアメリカの法律ですが、アメリカ以外の国の企業に多く執行されています。案件ごとの和解額トップ10に入っているアメリカ企業はわずか2社。それ以外はドイツやフランス、それに日本の企業などです。ですから総じて自国企業だけでなく日本企業を含む海外企業に対しても積極的に執行しているというトレンドが見て取れます。一方でUKBA※についてはこれまで大きな執行事例がない。2010年に制定されて以来、どこまで厳しいものになるか戦々恐々としていましたが、まだ実体がつかめないというのが正直な印象です。

守田 UKBAは、直近で「大手航空機メーカーへの調査が始まった」という報道も出てきており、今後の動きは注意して見ていかなければいけないと考えています。また、FCPAについても、その動向は相変わらず活発で個別の贈賄行為だけでなく、贈賄防止のための効果的な体制が整っているかなど、広範な取り締まりがなされています。

―日本企業のリスクという観点からはいかがでしょうか?

西垣 FCPAは広い適用範囲を持っているため、「うちはアメリカ企業じゃないから」と思っていても言い訳にはなりません。事実、日本企業には何社も執行されているので国際的なビジネスを展開している企業にとってFCPA対策は重要になってくるでしょう。

この問題でいちばん難しいのは「賄賂は支払わなければいい」という一言では済まないところ。海外でビジネスを展開している日本企業の中で賄賂を支払いたいという会社は存在しないでしょう。しかし最前線のビジネスパーソンたちは極限の状況に置かれると理由をつけて払ってしまう。昔はそれが一般的に行われていたのですが、トレンドが変わりFCPAも執行されるようになった。現地の法整備もどんどん厳しくなってきている。

そうした中で古い感覚のままでビジネスをしていると非常に厳しい結果になってしまう。

※FCPA Foreign Corrupt Practices Act=連邦海外腐敗行為防止法。適用範囲が広く、制裁も厳しいことで知られ、グローバル企業はつねにFCPAを警戒している
※UKBA UK Bribery Act=英国贈収賄防止法。2010年にできた新しい法律で、私人間の賄賂も適用範囲とFCPA以上に厳しい面も。ただ、主な摘発事例はまだない

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