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摘発されれば企業価値に甚大な被害
高まり続ける海外贈収賄というリスク
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現地の習慣、その他事情や、従業員のマインド等を考慮しつつ問題を解決していかねばなりませんし、最終的には本社と同じレベル・マインドまで持って行かなくてはならず、どの企業も課題になっているのではないかと思います。

―そうした課題に対して企業はどのような姿勢で臨めばいいのでしょうか?

西垣 これまでM&Aを行う際、デューデリジェンスで財務情報は確認していても、反汚職の観点から見ていませんでした。そういうことはあるだろうという前提で買収が行われていたのです。しかし現在ではそうした状態で買収を行うと、いざ問題となったときに買収した日本企業が罪を犯すことにつながる。それを避けるためにも危険国でM&Aを行うときにはできるだけ早い段階で贈収賄がある前提に立ち、デューデリジェンスを反汚職の観点から意識的に行う必要があります。

また、実際に良からぬことが見つかったときにどう対応するかも考えておく必要があるでしょう。何かが出てきたときにどうするか腹が決まっていないと、チームとしてロジカルかつリーズナブルなアプローチができなズナブルなアプローチができないからです。方策としては、三つあります。第一に、「贈賄の支払いなど違法行為なしには到底、ビジネスが成り立たない」というときには買収取りやめ。第二に、「事業の一部だけ問題があるけどそれ以外はクリーンだろう」というときは、そこだけ切り出して残りを買うようにする。いわゆる、カーブアウトです。第三に、買収後に問題が発生したときのために明示的な表明保証条項※などを入れておくことで損害を売り主に請求できる道を明確にしておく。加えて買収後にもう一度デューデリジェンスを行うことでリスクを軽減できるでしょう。

富田 M&A等の際のデューデリジェンスは近年、非財務面も注目を集めるようになってきています。情報が限られた、特にアジア諸国で、コンプライアンス面で問題がないかどうかを確認することは難しい作業ですが、極めて重要です。また、贈収賄が成立するためには外国公務員が誰であるかを把握する必要がありますが、実際は準公務員と言える人たちも把握すべきで、それは容易ではありません。

※表明保証条項 契約者や契約の内容等に関連する事実が真実かつ正確である旨を契約売り主が表明し、買い主に対して保証するもの
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