「若者の○○離れ」批判は根本からズレている オジさんには見えない5つの前提変化とは?

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2016年は、選挙権を持つ年齢が18歳に引き下げられたこともあり、世の中と若者の関わり方について、特に注目が集まりました。一方で、若者からすれば「そういうことじゃないんだけどなあ…」という大人側のズレも、改めて浮き彫りになりつつあると感じています。

「若者の○○離れ」の背景には、多くの場合、以下のような時代との前提の変化があります。

まずは、少子化です。単純に「かつての若者世代」よりも「今の若者世代」のほうが少子化によって人口ボリュームが少なくなっています。よって、たとえば一人当たりの消費額が過去比較で同等だとしても、市場規模は小さくなることは当然ですね。離れているのではなく、人数が減っているだけのパターンです。

次に考えられるのは、商品やサービスの革新。例えば「若者の黒電話離れ」という言葉は、さすがにジョークにしか聞こえないでしょう。なぜならそれは、技術革新においてその行為やアイテムが寿命を終えただけということであり、「黒電話」という手段はなくなっても、「親しい人とだらだらとコミュニケーションする」という行為は、スマホやSNSにカタチを変えて残っています。

しかし、どうしても大人が「若者の○○離れ」と考えてしまいがちなのは、その手段を供給する側の都合(その商品・サービスを売らないといけないという都合)でしかなく、若者からすれば「そんなの知るかよ…」となるのは自明です。技術革新のスピードが情報革命によって格段に上がり、供給側のマーケティングが近視眼的な状態に陥りやすくなっていることが、背景にはあるのです。

バブル時代の感覚でモノを語られても・・・

3つ目は、おカネの若者離れ。ネット上で最もよくみる若者本人たちの言い分が、「買わないんじゃなくて、買えないんだ」ということ。非正規雇用は増加の一途、可処分所得も右肩下がり、加えて景況見通しや日本の将来観についても年金問題や高齢化など、あまり明るい観測がありません。

電通若者研究部の2015年の調査でも、実に77%の若者が「日本の将来が不安」だと回答しています。原資も減り、将来も不安だと、消費がリスクに見えるのも仕方ないかもしれません。それにもかかわらず、「若者の○○離れ」を嘆く大人の考える若者像は、近代日本史における“外れ値”ともいえるバブル絶頂期のそれであることも少なくないです。これでは、ズレて当然といえるでしょう。

4つ目は、フリーミアム&シェアリングエコノミー。「基本的な部分はタダでできること」「所有せず共有で可能なこと」は日に日に拡大しています。言い換えると、それは「消費金額」と「行動や熱狂」が、必ずしもきれいに比例しない時代の到来ともいえるでしょう。ビジネスモデルそのものが、「価値の最終受給者から代金を徴収しないモデル」をはじめとする、新たな形態に多様化し、消費という行為そのものの定義が移ろいつつあるのです。

これまでの消費のあり方を前提に若者をとらえると「何がしたいのか全然見えない」という結論に至るのは無理もないこと。「どうしたら直接お金を落としてくれるか」だけを考え始める前に、実際の彼らの行動や熱狂と、それにまつわるビジネスモデルの構造を注視するべきといえます。

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