武富士を襲う「仕組み金融取引」の衝撃

武富士を襲う「仕組み金融取引」の衝撃

突然、思わぬところから弾が飛んできた--。

武富士が去る3月3日に行った「実質的ディフィーザンス解消」に関する適宜開示は誰も夢想だにしなかった内容だった。「最大で300億円」という損失規模もさることながら、その発生原因が「仕組み金融取引の清算」という意外なものだったからだ。

「仕組み金融取引」とは証券化資産投資をベースにしたハイレバレッジ取引であり、損失額はその大幅な時価下落に伴って発生した。サブプライムローン問題に端を発した証券化資産の暴落は、欧米の投資銀行や商業銀行を危機に追い込んでいる。その一方で、邦銀が被った傷は相対的に浅いといわれてきた。ところが、銀行セクターではない領域から厳しい話が飛び込んできたわけだ。

結局、武富士は3月17日、2008年3月期決算の業績予想を下方修正。特別損失を計上し、連結当期純利益は433億円から一挙に136億円へと297億円減額した。従前の予想利益の68%が吹き飛んだことになる。

元本が吹き飛んだハイレバの仕組み

それにしても、投資元本300億円のほぼ全額が失われるという事態は尋常ではない。「シティバンクが何千億円」等々、評価損の合計額はしばしば報じられているものの、投資の実態はほとんど明かされてこなかった。その分、武富士で発生した今回の出来事では、証券化資産投資の実情が具体的に示された。端的にいって、それは「投資元本が消えてなくなる」というすさまじい実態だ。

武富士が07年5月に行ったディフィーザンスとは、バランスシートのスリム化策だ。02年6月に発行した15年物社債(表面利率4%、発行額300億円)を期限前償還することなくバランスシートから落とすために、社債発行額と同額の信託設定を行い、社債の表面利率と同水準以上の信託配当が得られるように運用する。社債の利払い負担を信託配当で吸収し、満期償還金は信託元本で充当できるという計算を成り立たせることで、資産との相殺による負債のバランスアウト効果がもたらされる。

 既発社債を期限前償還したくても財務制限条項で期限前償還が禁止されているというようなケースでは、ディフィーザンスは財務手段となる。ディフィーザンスを実行している企業は武富士に限らない(表)。

こうした性格がある以上、ディフィーザンスのための資産運用に確実性が求められることはいうまでもない。実際、オフバランス化に関する金融商品の会計実務指針では、金融商品の適格条件を「国債・政府保証債」のほか、「ダブルA格以上の社債・銀行預金」としている。

ところが、武富士の場合、資産運用の確実性が崩壊してしまった。結果として、評価損失の発生のみならず、バランスシート上で社債債務が再び認識されることになった。踏んだり蹴ったりの顛末といえる。

ディフィーザンスのアレンジャーはメリルリンチ日本証券だった。メリルは武富士が拠出した300億円を米国系ヘッジファンド、シグマファイナンス設立のSIV(投資ヴィークル)が資金調達のために発行した担保債券に全額投資した。投資時点の同債券の格付けは高かった。さらに同債券を担保に拠出して、インデックス債を組み込んでクレジット指数で構成するCPDO(定率債務証券)に再投資した。この商品のレバレッジは15倍だった。

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