日本人はどこから来て、どこに向かうのか グローバルエリート、国家観を語る

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外国の脅威を感じて高まる国家意識

日本人の国民意識が特に強まったのが鎌倉時代の元寇のときだったというが、国という単位で外国の脅威を痛感したので、それに協同して対するうえでも、“国民国家”という意識を強める必要があったのだろう。これは明治維新のときに列強からの脅威を受けて国民意識が高まったこと、また中国の勃興を受けて右傾化が進んでいる現在とも相重なる。

日本では高齢化が進み不況が長引き、生活水準でもアジア各国に追いつかれるか抜き去られつつあり、世界第2位の経済大国だったという国家的アイデンティティが揺らぎつつある。だからこそ日本人は新たな国家的アイデンティティを必要とし、それを模索しているからこそ“日本人とは何か”という議論が熱を帯びてきているのであろう。

この日本人の国家観の再定義を、戦前と同じように排外的な国粋主義に求めるようでは、あの戦争の教訓は何だったんだ、ということになるし、日本が社会として退化していくことを意味する。

冒頭のページで紹介した動画をクリックなさらなかった面倒くさがりの読者の皆様のためにもう一度紹介するが、こちらのたった1分の動画を見ていただければ、日本の未来を担う子供たちにも排外主義が確実に影響を与えていることがわかる。

これがCNNのサイトで話題になり、世界に拡散しているのだから事態は深刻だ。この中学生をつくりだしている周囲の大人たちに申し上げたいが、ぜひとも世界に貢献し、尊敬される日本という建設的な方向で自信と国家的アイデンティティを取り戻してほしい。

あなたにとっての、国家観とは何か

さて、日本人とはどうあるべきか、とか日本人はこうだった、といった議論に普遍性などなく、100年単位どころか30年、10年単位でも社会は激変している。平成25年の日本人はバブル時代とは生活習慣や思考様式が大きく異なり、それらも戦争中の日本とは遠い最果ての外国と比べてもまったく違う。奈良時代と平安時代でも大きく異なるし、戦国時代と江戸時代でも帰属する国家の単位が著しく異なる。

日本人とは何か、という問いに答えるとき、あなたはどれくらいの時間軸をさかのぼって答えるだろう。またどこまで広い視点で考えるだろうか。ひょっとすると各論が多くなり、総括できないかもしれない。しかし日本を構成する最大公約数的な三大最優先ポイントを挙げるとしたら何か。しかもそれは主観としての日本像であり、客観とも現実とも懸け離れている単なる理想や願望、ないし極端な悲観かもしれない。

それでも日本はどんな国で、どんな国に変わっていきたいか、という国家観を一人ひとりが考えなければならない。でないと、そのうち(そんな状況を)周到に準備してきた政治家から勝手な国家観を押し付けられ、その思想コントロールに嬉々として従う、つまらない国家に成り下がってしまうだろう。

ムーギー・キム 『最強の働き方』『一流の育て方』著者

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Moogwi Kim

慶應義塾大学総合政策学部卒業。INSEADにてMBA取得。大学卒業後、外資系金融機関の投資銀行部門にて、日本企業の上場および資金調達に従事。その後、大手コンサルティングファームにて企業の戦略立案を担当し、多くの国際的なコンサルティングプロジェクトに参画。2005年より外資系資産運用会社にてバイサイドアナリストとして株式調査業務を担当した後、香港に移住してプライベート・エクイティ・ファンドへの投資業務に転身。英語・中国語・韓国語・日本語を操る。著書に『世界中のエリートの働き方を1冊にまとめてみた』と『一流の育て方』(母親であるミセス・パンプキンとの共著)など。『最強の働き方』の感想は著者公式サイトまで。

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