サウジがテロ拡大の「犯人扱い」される理由

オイルマネーで原理主義を世界に「輸出」

サウジがワッハーブ主義の「輸出」に精を出したことが、過激派を作り出した側面があるとの見方もある(写真:Tomas Munita/The New York Times)

11月の米大統領選に向けて火花を散らす、民主党のヒラリー・クリントン候補と共和党のドナルド・トランプ候補。この2人の意見が一致する領域は多くないが、サウジアラビアは例外かもしれない。

クリントンは、サウジが「世界中の急進的な神学校やモスクを支援し、多くの若者を過激主義に走らせている」と非難。トランプも、サウジは「世界最大のテロ資金提供者だ」と批判してきた。

2009年から5年間、米国務省イスラム世界担当特別代表として80カ国を訪問したファラー・パンディス米外交問題評議会研究員は、サウジの活動によって、イスラムの伝統的な寛容性は破壊されつつあると語る。「サウジが現在の活動をやめなければ、外交的、文化的、経済的な影響は必至だ」。

テレビや新聞では、自爆テロ事件が起きるたびに、背後で糸を引いているのはサウジだという識者の声が紹介される。トーク番組の司会者ビル・マーは、サウジが広める教えは「中世的」だとして、口汚く罵った。著名ジャーナリストのファリード・ザカリアはワシントン・ポスト紙で、サウジは「イスラムの世界にモンスターを作り出した」と書いた。

「放火魔であり消防士でもある」

こうした解釈はいまやあらゆる場所で見られる。サウジが国教とするワッハーブ主義(男性中心の厳格なイスラム原理主義)をせっせと「輸出」してきたことが、イスラム世界の過激化を促し、テロを拡大させてきたというのだ。イスラム国(IS)が欧米諸国でのテロを推進(または指示)するなか、サウジの役割をめぐる議論が再燃している。

果たしてサウジアラビアは、石油の富を武器にこの50年間進めてきた「布教活動」によって、世界を一段と分断させ、危険で暴力的にしたのか。それとも過激主義やテロリズムは多くの複雑な要因が絡み合って拡大してきたのであり、サウジはスケープゴートにされているにすぎないのか。

こうした問いには複雑な要素が絡んでおり、容易に答えは見つからない。それはサウジ自身が相反する衝動を抱えているからでもある。

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