「解雇ルール見直し」に強まる反発 労働市場改革に立ちはだかる高い壁

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政府の規制改革会議の民間議員である、鶴光太郎・慶応義塾大学大学院教授は、そうした状況を憂慮し、「解雇ルールというより、正社員改革の議論をすべき」と話す。鶴氏が提案するのは、「限定社員の雇用ルール整備」である。

鶴氏によると、現状の「正社員」は、職務や地域などが限定されない雇用契約を会社側と結んでいるため、仮に所属先の部署の業績が悪化しても、他部署や地域に転籍できる。結果的に企業が余剰人員を抱え、雇用の流動化につながらない。

「職務や地域を限定した新たな正社員のルールを設ければ、雇用契約のハードルが下がる一方、事業の終了時に雇用関係も終了しやすくなり、人の移動が促される」(鶴氏)

鶴氏はこうした限定社員に加え、「金銭解決」のルールも提案する。日本では裁判で不当解雇と認められても、原職復帰しか選択肢がない。欧州では一定額の保証金を支払えば雇用関係を解消できる「金銭解決」があるという。日本でも同様のルールを導入すれば、「解雇条件をめぐって一つの目安ができる」(鶴氏)。

しかし、こうした提案にも労働団体は懐疑的な見方を示す。「限定社員が制度化されれば、正社員、非正社員に次ぐ第3カテゴリーとなり、正社員から落とされ、固定化される人が多く出るのでは」(連合幹部)。

産業競争力会議や規制改革会議での議論は、政府が6月にまとめる成長戦略に反映される見通し。しかし、法案などに落とし込む段階では、厚労省の審議会で労使による合意が不可欠だ。解雇ルール見直しの行方には不透明感が漂っている。

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