想定外の賠償・廃炉費用を誰が負担するのか 東電への追加支援をめぐり、政府が協議へ
政府および原子力損害賠償・廃炉等支援機構は、東京電力ホールディングスからの要請を踏まえて、福島第一原子力発電所の廃炉や損害賠償費用の負担のあり方の検討に着手する。ここ1~2カ月の間にも、電力自由化の進展を踏まえた原子力事業の環境整備の一環として、経済産業省を中心に関係者間で支援の枠組みを決めるための議論が始まる見通しだ。
東電は7月28日、2016年度第1四半期決算発表と同じタイミングで「激変する環境下における経営方針」を発表。当初の見通しを大幅に上回る賠償費用について、政府に負担のあり方を明示するように求めた。「数兆円規模に上る」(証券市場関係者)とも見られる福島第一原発の廃炉費用についても、確実に賄うための仕組みの具体化を要請した。
「際限ない負担」に危機感
東電の數土文夫会長は当日の記者会見で「(2013年12月策定の)新総合特別事業計画(新総特=現行の再建計画)時から環境が激変している。電力需要が縮小傾向にある一方、原発再稼働の遅れ、COP21で約束した二酸化炭素抑制対策など、さまざまな課題がある」と述べた。
そのうえで「(負債の大きさなど)ハードルの高さが見えず、青天井であるようだと経営者としては責任を持てない。(このままでは)国民やお客様の負担を最小限にするために有効な手が打てるかわからない」と危機感をあらわにした。
數土氏らとともに記者会見に臨んだ西山圭太取締役執行役(経産省からの出向)も、「廃炉という大事業を東電だけで成し遂げることは不可能。政府にはぜひとも連携態勢を整備してほしい」と訴えた。
過去にも東電では、経産省から送り込まれた役員が、全社外取締役の署名が入った要請文を同省に差し出して、新総特策定に際して除染や中間貯蔵施設建設費についての国からの追加支援を引き出した経緯がある。国有企業から国へのまさに直訴とも言える今回の支援要請は、当時を想起させる。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら