想定外の賠償・廃炉費用を誰が負担するのか 東電への追加支援をめぐり、政府が協議へ

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もっとも、東電の置かれた状況の理解は容易ではない。前回の支援要請時と比べて、収益力は大きく改善している。前2015年度については、LNG(液化天然ガス)など火力発電の燃料費が大幅に減少したことから、連結営業利益が原発事故前の水準に匹敵する3000億円台の水準を確保している。2016年度第1四半期も燃料安や円高が下支えし、1400億円を上回る営業黒字を稼ぎ出している。

格付会社スタンダード&プアーズ(S&P)の柴田宏樹アナリストは、「燃料費の低減、コスト削減努力、2012年の電気料金値上げが収益の安定化に寄与している」と分析する。また、新総特策定時に主力銀行を中心とした金融機関による支援態勢が確立し、現在まで社債償還のための借り換え資金の融資が継続していることについても、柴田氏は経営安定化を示すものとして評価している。こうした状況を踏まえてS&Pでは今年4月に東電の格付のアウトルック(見通し)を「ポジティブ」に引き上げた。

一方で、多額の賠償負担などを抱えていることから、長期会社格付は投機的等級のBBマイナスにとどまる。ただし、「柏崎刈羽原発の再稼働、自力での資金調達能力向上の2点で見通しがはっきりしてくれば、格上げの可能性も出てくる」とも柴田氏は説明している。

廃炉費用を誰が負担するのか

こうした中で新たな問題として持ち上がっているのが、想定を超えて増大する賠償総額や、これから本格化する廃炉に必要な費用の扱いだ。

新総特では東電が経営合理化をさらに進めることと引き替えに、国からの交付国債の枠が従来の5兆円から9兆円に増額された。この時、賠償や除染、中間貯蔵施設に関する費用をそれぞれ5兆4000億円、2兆5000億円、1兆1000億円と見込むとともに、除染費用については、原賠機構が保有する東電株の売却益、中間貯蔵施設建設費については電源開発促進税(エネルギー対策特別会計を経由。原資は各電力会社の電気料金収入)でカバーすることとした。また、廃炉についてはすでに会計上引き当てている約1兆円のほかに、1兆円を合理化努力で捻出することを東電が約束した。

しかし、それから2年余りが経過し、電力自由化など環境変化が進む中で、想定を超えた賠償費用の増加など新たな問題の解決が必要になってきた。

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