エイベックスは、このまま行くとダメになる 松浦社長「いつの頃か大企業病になっていた」

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山田:現状のどこがまずいのでしょうか。

松浦:昨年、2016年3月期の中間決算が終わったタイミングで、利益予想が大きく下振れした。この時点では、当初予想から70億円の下方修正をせざるをえなかった。これにはびっくりしました。「なんでだ?」っていう話じゃないですか。確認してみると、大きな原因のひとつとして映像コンテンツを積極的に投入したことによる調達費に要因があって、これだけの差が出た。ほかに為替差損などもあったんですが。

山田:海外との契約ではありがちなことでは?

松浦:いや、単なる契約の話とは思えなかったので、真剣に振り返って考える必要があると思ったんです。この数年間、エイベックスはプラットフォームに力を入れてきました。映像ではNTTドコモと共同で進めているdTV、音楽ではAWA(サイバーエージェントと進めている音楽配信サービス)などです。

エイベックスはずっとアーティストを育ててヒットを生み出すことを事業の中心に据えてきた。しかし、これはどうしても不安定なわけです。ヒットが毎年出るかはわからない。そんな予想しにくいことをやっていたので、安定的な収入を得ることができるプラットフォームのような仕組みがあると安心なので、そこに力を入れてきた。

山田:音楽ストリーミングサービスでは、世界をみるとSpotify、Apple Musicなどがある。そうした外資に対抗するために、日本独自のサービスを立ち上げました。

プラットフォームは飽和状態

松浦:CDの売り上げがどんどん下がっていく中では、プラットフォームを自社で持たなければならないという意識があった。ただ、プラットフォームも伸び続けるわけではない。dTVの会員は伸びてはいるが、映像配信サービスは海外サービスも参入し飽和状態になっている。

音楽配信サービスのAWAはすごくいいものができている。ただ会員数は思っていたよりは伸びていない。内容的には絶対に負けないとは思うんですが、日本のユーザーは外資のサービスに弱い。音楽配信サービスに楽曲を出していないアーティストがいよいよ楽曲を提供するという時期が来たらAWAを選んでもらえると思うが、まだちょっと時間がかかる。

山田:この5年を振り返ると、音楽以外の分野でのヒットも連発させており、活動の幅が広がっています。

松浦:昨年も『妖怪ウォッチ』『アナ雪』『おそ松さん』などが大ヒットしたので、売り上げは伸びました。プラットフォーム戦略とこうしたヒットのおかげで成長し続けることができた。でも、ずっと違和感があった。

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