エイベックスは、このまま行くとダメになる 松浦社長「いつの頃か大企業病になっていた」

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松浦:なぜ違和感があったのかというと、「自社所属のアーティストを作れていないじゃん」ということ。ヒットしたコンテンツ自体は他社が制作したもので関連した商品で売り上げを立てられただけ。これは自分たちで生み出したものではないのではないかと。

もちろん、昔とは売れるアーティストの作り方も全然違っているので簡単ではない。新しい作り方をしなきゃいけないんですけど、それがまったくできていなかった。

山田:難しい宿題を横に置いたままにしてきた。

松浦:これはエイベックスだけの宿題ではない。今の時代に合わせたアーティストの育成は、どこもできてないんじゃないかと思います。そもそもヒットの基準をどこで見るのかも、旧態依然としている。CDが何枚売れた、売れなかったというのが、いまだにアーティストが売れている、売れていないという判断基準になっている。自分たちだってもうそんなにCDを買っていないのに、CDを評価基準にしているなんておかしいわけです。

しかし、CDだけを取ると、ものすごく悪いように見えますけど、音楽業界全体、ライブやデジタルの分野まで含めると右肩上がりです。そこの中できちんとやっていくためには、頭の中がCDになっているものを、ライブやデジタルに切り替えなければいけない。でも、考え方を変えるのって難しい。昨日も新卒の社員が言っていました。「社長はそう言いますけど、上司はCD何枚売れたか?って聞いてきますよ」って。

聖域を取り払って、ゼロから会社を考え直さなければ、相当まずいところまで来ている。そのためには会社を分解できるところまで分解して、チェックをしなければならない。人間ドックみたいなものです。今、それを1年かけて徹底的にやっているところです。

山田:人間ドックでは見たくないもの、嫌なものも見えてきます。

松浦:嫌なものですが、見ざるをえない。匿名の全社員アンケートを初めてとったのですが、結果は衝撃的でした。これまでも社員が何を考えているのか知る必要がある、とは考えていたけれども、なかなか取り組めなかった。でもそういったことも今後は全部やっていこうと決めました。

1年かけて会社の見直しをする

松浦勝人(まつうら まさと)/エイベックス・グループ・ホールディングス社長CEO。1964年10月1日生まれ。日本大学在学中に貸しレコード店の店長を務め、1988年にエイベックスを設立。音楽ビジネスを軸とする総合エンターテインメント企業を作り上げた

山田:今年はあえて「踊り場」にして、次の売り上げ成長のための基盤を作る、ということでしょうか。

松浦:踊り場と言っているのは、売り上げの意味ではなく、1年かけて会社の見直しをする、ということです。

エイベックスってチャラチャラしたイメージがあると思っていたので、ちゃんとした会社にしたいという思いが逆に窮屈な環境を作ってしまった。

とくに良くないと思っているのは、社内のセクショナリズム。内部調整や内部取引が非常に多い業務になっている。そのエネルギーは、外に使ったほうがいいわけです。このようなこともアンケートの結果で多くの社員が書いていました。

山田:社内の会議ばかりになってしまうのは、典型的な大企業病ですね。

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