人口が1.5倍に増えた福島・相馬の2年 低放射線量で他地域から移住者が相次ぐ

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3月11日に起こった東日本大震災から2年。復旧はできたのか、また本当に復興はできるのか。2年前の3月20日に福島県相馬市に現地入りし、撮影した時の写真と、2年後に同じ場所で撮影した写真をなどを見比べながら、被災地の復興を考える。

福島の他地域から人々が移転する相馬

福島県相馬市は、事故のあった福島第一原子力発電所から約40キロほどのところにある。人口は3万6500人ほどだ。主要産業は農業、漁業、観光だった。火力発電所やIHIなどの工場もあるが、大震災後、主産業の漁業は壊滅的打撃を受け、ごく一部の試験的な漁が行われている程度。農業は、津波の被害が大きかった地域を除けば、稲作についてはようやく元に戻りつつあるが、震災前の状態にはほど遠い。

同じ福島県でも、原発事故があった浜通り地方は、大熊、浪江、双葉、富岡など、放射能汚染で帰宅困難地域となっており、戻りたくても戻れない、あるいは戻りたくない住民は、相馬市やいわき市に仮住まいしている人が多い。また、原発事故後の放射線量の推移をみると、福島市や郡山市よりも、相馬市やいわき市のほうが低いこともあって、同じ福島県の相馬市に移転する人も少なくない。

そのため、相馬市の人口は急増、「地元のスーパーの食品の売り上げから推定すると、1.5倍程度に増えている」(地元関係者)といわれている。津波の被害が大きかった松川浦、原釜、磯部地区などから、津波被害のなかった内陸部に移転する人たちも多く、また仮設住宅から引っ越す人も含めて、市街地を中心に住宅需要は強い。土地や建て売り住宅だけでなく、貸家、アパートなど空きを待っている人たちが多く、住宅不足に陥っているというのが現状だ。

こうした建設・土木、不動産関連に特需が発生している一方で、津波の被害が大きかった地域は、いまだ復興というには程遠い。次ページ以降では、大震災前と後の写真を見比べることによって、どの程度復興が進んだのか検証しよう。

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