IT革命で潤うのは「トップ1%」だけ 『機械との競争』著者のアンドリュー・マカフィー氏に聞く
――IT革命の恩恵を受けている職種は?
コンピュータ科学者やデータ科学者、プログラマーなど、高給で知られるハイテクの仕事だ。アマゾンやアップル、フェイスブック、グーグルなどの社員は、上層部だけでなく、中間管理職でも学歴やスキルが非常に高い。特にこれからキャリアを築こうとする若者には、とても魅力的な仕事だ。シリコンバレーは、基本的に不況とは無縁である。
その一方で、求人数が多くないにもかかわらず、人材難に悩んでいるのも、この業界だ。世界トップレベルのプログラマーなど、極めて高度なスキルを持った人材を探しているので、なかなか人材が見つからない。
――逆に減っている職種は何か。
事務や事務補助、秘書、営業など、ホワイトカラーの仕事だ。コンピュータのおかげで文書事務が減ったことも一因となっている。会計士や弁護士などの専門職も例外ではない。税計算ソフトのおかげで、複雑な所得税の申告もネットでできるようになり、ソフトの開発会社は大いに儲けたが、数年前に比べ、税理士の需要は8万人も減った。
弁護士も同様だ。以前なら、訴訟などで膨大な資料を手作業でチェックする必要があったが、今では、データ分析ソフトが同種のパターンなどを見つけ出してくれるため、少ない人手で済む。テクノロジーは中流層のみならず、上流中産階級や専門職にまで影を落としている。法曹界の仕事は、高給で雇用が安定し、名誉も兼ね備えた仕事として知られていたが、もはやそうではなくなった。
――低賃金労働者への影響は?
中流層ほど打撃は受けていない。たとえば、ウエートレスの仕事は、ロボットでは無理だ。低スキル労働のほうが、中流層の仕事よりも賃金の減り幅が少ない。中流層ほど高い教育レベルが必要なく、収入もさほどよくないが、中流層の仕事より安定している。
現在、米国経済は非常に興味深いパターンを示している。低所得層のほうが中流層に比べ、10~20年前より状況が悪化していないのだ。ひるがえって中流層は、平均収入が下がり、失業の可能性も高い。トップ1%がさらに豊かになっているのは、言うまでもないが。
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