インドの中古車市場を「ゼロ」から創った男 日本を抜いて「世界3位」の自動車大国へ

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だが、これでは、売り手側の「自己申告」を信頼するのが前提になってしまう。「悪質な改造車」などを排除し、品質面をどうやって担保するのか。もし手が加えられた中古車をユーザーが買ってしまったら、大変だ。

ドゥルーム社は、全インドに約50万社程度あるといわれる車検業者のネットワーク化も同時に着手した。同社と契約を結んだ車検業者の認証を取れば、信頼度スコアにも反映される仕組みをとることによって、ともすればブラックボックス化しかねない中古車の品質を向上させることに成功したのだ。

さらに、同社がとりいれているサービスとして、コミットメントフィーという概念も斬新だ。これは買い手が予定売買金額の2%を、仲介に入るドゥルーム社に支払うと、売り手はその車を一定期間とりおいてくれる、というものだ。

買い手はこの時間を使って実際に試乗したり、売り手に対してより多くの質問をしたりする余裕ができる。もちろん、実際に買うなら、買い手は残りの98%を売り手に支払う。買わない場合は、ドゥルーム社から買い手にお金が返金される。

このシステムを使うことによって、真剣な買い手のみを売り手につなげ、売り手も真剣に対応することで無駄な問い合わせが激減するという流れを生み出しているのだ。

夢は2018年後半以降のナスダック上場

大きな可能性を秘めるドゥルーム社。米国経由でその成功を知る日も遠くなさそうだ

ドゥルーム社の優れているところは、先進国のように法整備が完全にはなされていない環境下で、政府からの支援を、首を長くして待つことをせず、ネットの力をもって、自らの手で課題解決に動いたことだ。

今後の同社の展開はどうなるのか。実は前出の「オレンジブックバリュー」や「信頼度スコア」などは米国での特許もすでに取得済みだ。また、「インドだけでなく、東南アジアや中東でも今後ビジネスを展開していきたい」(アガルワル氏)。今でこそ首都ニューデリー近郊での取引が過半を占めるが、今後は取引の急増が見込まれる。

そのため「2020年には流通総額で年6000億~7000億円に達することも、夢ではない。この成長の過程で、2018年後半以降になるかもしれないが、米ナスダック市場に上場したいね」(同)。インドの自動車市場でエキサイティングなのは、新車だけではない。

福井 純 東洋経済 記者

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ふくい じゅん / Jun Fukui

「会社四季報オンライン」編集部長。『週刊東洋経済』編集部、『会社四季報プロ500』『株式ウイークリー』『オール投資』編集長、「東洋経済オンライン」編集部長、証券部長を経て現職。国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe®)、日本テクニカルアナリスト協会理事

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