日本はなぜ、極右など右派ばかりなのか 島田雅彦×波頭亮 日本の精神文化のゆくえ(上)

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たとえば、戦後民主主義というやや古びた言葉を思い出してみると、どこか与えられたシステム、借り物というニュアンスが込められているように思います。

多くの国民は、米国の占領政策を平和と民主主義という形で歓迎しましたが、一方でその後の時代には米国の方針に盲従することに対する不快感から、安保闘争などの学生運動が大きく盛り上がった。

そして政治の世界では、自民党が長期単独政権を築き、自民党には何が何でも反対という万年野党の社会党とともに、いわゆる55年体制が構築されました。

選挙によって選ばれた政権ですから、一応民主主義は機能しているように見えますが、自民党の一党独裁という捉え方をしたならば、中国や旧ソ連とそれほど変わらなかったのではないかと思うのです。

波頭:そうですね。実質的な意味での政権交代は、まだ中国や旧ソ連のほうにあったと言えるかもしれません。中国では文化大革命が起き、次には文革が否定され、さらには改革開放路線へシフトチェンジを行った。

形としては共産党の一党独裁ですが、その政策方針の変動は政権交代を行った以上のものがあります。旧ソ連にしても、体制が崩壊しましたから、大きな革命があったに等しい。

さらに言うと、お隣の韓国も軍政がクーデターによって打破されて、大統領選が行われるようになってからは大統領が代わるたびにその出身地が繁栄するという極端な経済政策が取られた。しかも、大統領を辞めると逮捕されたり、自殺したりと変転が激しいですね。

一党独裁の共産主義国家でさえ、これほどの変転を経験しているのに、民主主義国家であるはずの日本だけが何も変わらずに戦後50年を経たというのは、非常に奇異な状態だと言わざるをえません。

島田:2009年の政権交代にしても、発足当初は、中道右派と左派がバランスよく構成されていたと思いますが、3年経ってみて、結局「第2自民党」にすぎなかったことがはっきりしました。

波頭:子ども手当はなくなり、八ッ場ダムは建設再開、高速道路建設凍結も撤回された。最後に整備新幹線の着工認可で総仕上げ。それで自民党野田派と言われています。

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