日本はなぜ、極右など右派ばかりなのか 島田雅彦×波頭亮 日本の精神文化のゆくえ(上)

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極右vs.中道右派 左派的選択肢がない異様さ

島田 雅彦 (しまだ・まさひこ)
小説家

1961年東京都生まれ。東京外国語大学ロシア語学科卒業。在学中の83年『優しいサヨクのための嬉遊曲』(福武書店)で小説家デビュー。84年『夢遊王国のための音楽』(福武書店)で野間文芸新人賞、92年『彼岸先生』(福武書店)で泉鏡花文学賞、2006年『退廃姉妹』(文藝春秋)で伊藤整文学賞を受賞。『僕は模造人間』(新潮社)、『自由死刑』(集英社)、『彗星の住人』(新潮社)、『悪貨』(講談社)など著書多数。文芸家協会理事。法政大学国際文化学部教授。

島田:そもそも対立概念である自由と民主が結び付いていることからして、政治的対立は無化されているわけです。

奇妙なことに、それぞれの政党から新党を立ち上げた人たちは、極右を含めておおむね右派。右派の主張ばかりが目立って、民主党に残っている左派も、社会民主系の中道左派もほとんど埋没してしまった。

波頭:唯一、中道左派的な政策を前面に掲げているのは、国民の生活が第一だけです(注:対談時点で、日本未来の党はまだ結党していない)。かつての民主党のマニフェストを掲げているわけですが、世間での話題性は驚くほど小さい。

今回の総選挙で国民に提示されている選択肢は、極右か右翼かで、左派的な政策の対立軸がありません。これは民主主義社会として非常に気持ちが悪い。

キャピタリズムと市場主義の国である米国ですら、オバマとロムニーは左対右の対決でしたし、ヨーロッパもEUができて左派的な政策が行き過ぎましたが、ギリシャ問題が出てきて、また右と左の再議論が始まったところなのに、日本だけが右的な議論しか起きていない。

これでは、民主主義国家が進んでいくあり方として健全とは言えないと感じています。

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