衝撃予測!日本は「2050年の世界最強国」か プレストウィッツが説く「日本復活」の裏側

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アメリカやイギリスが利上げをすれば、円安になり輸入物価が上昇する。国民生活が苦しくなるので、どこかで日本も利上げし、円安を是正せざるを得なくなるでしょう。そうなれば、債務の利払いが一気に増え、税収のかなりの部分を債務の利払いに当てざるを得なくなります。

――安全保障の面でも危機が懸念されますね。本の中でも「2017年、尖閣占領危機」というシナリオに触れていますが、中国の台頭という現実は無視することはできません。そのような中で日本の安全保障はどうあるべきか、どうあるのがアメリカはベストだと考えているのでしょうか。

その問題に対して、アメリカには大きく言って2つの考え方が存在しています。

ひとつは従来型の伝統的な考え方で、現時点ではこちらのほうが支配的ですが、日本、韓国、フィリピンとの同盟を維持しながら、西太平洋はアメリカのコントロール下に置くというものです。当然、そのためにアメリカの軍事力も強化していきます。中国に対しては南シナ海に防衛ラインを置くべきだと考えていて、南シナ海を中国が支配しようとすれば、断固これを叩くべきというものです。

西太平洋は同盟国が自ら防衛するべき?

クライド・プレストウィッツ(Clyde Prestowitz)/1941年米国デラウェア州生まれ。1970年代に外資系企業役員として日本に滞在。国務省勤務、民間企業勤務などを経て、1981年商務省に入り、86年までの間、レーガン政権で商務長官特別補佐官などを務める。現在、経済戦略研究所(Economic Strategy Institute)所長。上院議員時代のヒラリー・クリントン氏の貿易・通商アドバイザーを務めた実績がある。日米貿易摩擦時に辣腕対日交渉担当官として鳴らし、テレビ・新聞・雑誌などで日本に多数の提言を行っている。著書にベストセラー『日米逆転』(ダイヤモンド社)などがある(写真:尾形 文繁)

もうひとつの考え方は、従来型の防衛政策とは異なるもので、西太平洋、とくに中国近海においてアメリカ軍の優位性を維持するのが困難になってきており、この先はもっと困難になっていくという見方をベースにしています。中国は猛烈な勢いで海軍力を増強し、対艦ミサイルなどの配備を強化しています。そのような中で、アメリカ軍がそれらを上回る軍事力、防衛力を維持しようとするならば、膨大なコストを負担しなければならなくなります。

加えて、彼らは、アメリカ本土から遠く離れた中国近海でアメリカ軍のプレゼンスを維持することが本当に必要なのか、と考えています。中国がアメリカ本土に攻撃を仕掛けてくると思うアメリカ人はほとんどいません。なのに、なぜアメリカ軍はそれほどまでして、西太平洋でプレゼンスを維持する必要があるのか、中国を挑発せずにもっとビジネスパートナーとしてうまくつき合っていけば良いではないかと考えるのです。

さらに極端なグループは、海兵隊の基地は沖縄ではなくグアムに、第7艦隊の基地は横須賀ではなくハワイにすればよいではないか。その場合のアメリカは西太平洋においては、もう主役ではなく「従」の存在で、仮に中国と周辺国との間で紛争が起こった際にも、まずは日本や韓国、フィリピン、ベトナムなどの当事国が中国に対峙せよ、と主張します。

そのうえで、あまりに大きくバランスが変わりそうな場合、アメリカの覇権に深刻な影響を与えるような出来事が起こりそうな場合にだけ、アメリカ軍が介入すればよいというのです。

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