技術や知的財産、守り抜けば勝てるのか? オープンイノベーションの権威、チェスブロウに学ぶ

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朝食会は、サンノゼ近郊のホテルで開催されていた。入口で朝食代30ドルを支払って席に着くと、隣に座っていた品のいい男性が話しかけてきた。

「仕事は何をやっているの?」

「UCバークレー・ハースの学生です。日本のJAXAという研究所で宇宙開発の仕事をしていました」

「僕は、ヴァージン・ギャラクティックのジョージ・ホワイトサイズだ。よろしく」

隣に座っていたのは、なんとヴァージン・ギャラクティック社のCEO、ジョージ・ホワイトサイズ氏だった(写真:Getty Images)

藤原さんは、その名を聞いて、固まってしまった。

ヴァージン・ギャラクティック社は、ヴァージン・グループのリチャード・ブランソンCEOが創業した宇宙旅行を主催する会社で、藤原さんにとってはあこがれの会社でもあった。

ジョージ・T・ホワイトサイズ氏は、NASAの元首席補佐官。2008年からヴァージン・ギャラクティック社のCEOを務めている(ちなみに同姓同名の父、ジョージ・M・ホワイトサイズ氏は、ハーバード大学教授で、世界的な化学者だ)。

「まさか、シリコンバレーの小さなイベントで、ホワイトサイズさんにお会いできるとは、夢にも思いませんでした。その日の僕は、MobemberというUCバークレーのチャリティイベントに参加していて、クラスメートに面白おかしくヒゲを剃られていたので、『あこがれの人に会えたのに、よりによってこんなヒゲで……』とちょっと焦りました。開き直って、普通にお話させていただきましたが、お会いするタイミングが悪すぎたと、心では泣いていました(苦笑)」

宇宙ビジネスを狙う起業家、それに関心を持つ投資家で、イベントは熱気に包まれていた

話は少しそれるが、Mobemberというのは、オーストラリア発祥のNGO財団が主催する世界的なイベントだ。参加した男性は、11月(November)の1カ月間、口ひげ(Moustache)を伸ばし、剃る権利を友人などに売って、そのおカネを寄付する。寄付金は、男性の前立腺がんなど、男性特有の病気の予防活動に使われる。

後からわかったことだが、このイベントには、宇宙ビジネス界のキーパーソンがたくさん参加していたという。ロッキード・マーティン社(世界的な航空機・宇宙船の開発製造会社)のエンジニア、エックスプライズ財団(民間による月面無人探査のコンテスト等を主催)の関係者、エンジェル投資家、ベンチャー起業家など、そうそうたる顔ぶれが集まっていた。

「シリコンバレーには、宇宙ビジネスを立ち上げようと情熱を燃やしている起業家がたくさんいて、投資家も興味を持っていることがわかりました。『ビジネスとして成功するかどうかは分からないが、アイデアを試してみたい』と思う人たちがビジネスプランを提示し、それを投資家、エンジニア、起業の専門家などが揉んで、進化させていきます。こうやって、大きな市場を生むビジネスが生まれるのだと、交流会の現場で実感しましたね」

次ページ憧れのCEOへのメールが、きっかけに
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