ポケモンGOが切り開く「スマホ課金」の新境地 一部ユーザーには依存しない「みんなのため」

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従来のソーシャルゲームと呼ばれるような携帯電話やスマホのゲームは、基本的には無料でプレイできる形で提供され、アイテム課金と呼ばれるゲーム内のアイテムを有料で購入してもらう形で収益をあげるのが一般的です。

その中でも象徴的なモデルが、「ガチャ」と呼ばれる仕組みでしょう。「ガチャ」とはランダムでアイテムやキャラクターを入手できる仕組みで、たいていはゲーム内においてガチャ経由でしか入手できない強力なキャラクターやレアアイテムをアピールすることで、ユーザーが課金したくなる構造を作っています。

一見、ゲームを無料で提供してしまっては収益が上がらないように見えますが、実は無料でゲームを提供して大勢のユーザーにゲームをプレイしてもらうことで、そのうちの一部がガチャなどのシステムで課金をしてくれる方が、ゲーム会社としては儲かる、ということを証明したのが、グリーやDeNAのようなソーシャルゲーム会社です。

その成功パターンは、「パズドラ(パズル&ドラゴンズ)」の成功により時価総額が一時的に任天堂を超えて話題になったガンホー・オンライン・エンターテイメントや、赤字だった会社がモンストの大ヒットで大幅な黒字化転換に成功したミクシィでも踏襲されているといっていいでしょう。

「ガチャ商法」だと射幸性が強いが…

ただ、この「ガチャ商法」はいわゆる射幸性が強いため、欲しいアイテムが出るまでに大金をつぎ込んでしまうケースも多く、社会的に批判の的になりがちです。

今年に入ってもテレビCMを大量に投下して話題になったグラブルこと「グランブルーファンタジー」が、レアアイテムの出現率がアップするようにうたっているにもかかわらず実際には極端に低く、景表法違反ではないかという指摘を受けて騒動になっていますし、同様の騒動は頻繁に起こっています。

一方、ポケモンは言わずと知れた任天堂グループの看板コンテンツであり、子ども達に今も非常に人気のあるゲームです。そういった子ども向けのゲームのブランドであるポケモンGOが、こうした射幸性の強い課金システムを導入すればファンの反発は免れません。

ポケモンGOの発表会で石原恒和社長は、「本当に多くの人が薄く広い課金によって皆がフェアに遊べるような課金方法を考えていきたい。具体的には言えないが少数の人間が射幸心高く、課金するという方向とは真逆の仕組みを考えていきたい」と、射幸性の高い課金システムは導入しないことを明確に宣言していました。

実際に、日本でもポケモンGOが開始され一週間ほどプレイした自身の感想としても、この任天堂の「薄く広い課金」の形がポケモンGOには見事に実装されているように感じます。

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