ネット通販の「送料無料」は当たり前じゃない

回り回って痛い目にあうのは誰か?

便利さの裏で大きな代償を払っているかもしれません(写真:freeangle / PIXTA)
クリックひとつで即日配送、送料無料も当たり前――。消費者にとっては便利な時代になりつつありますが、作業の機械化や効率化だけでは済まず、それで割を食う人たちも存在します。
果たしてこの仕組みは、永続的なものと言えるのか?悪のヒーロー・朝倉恭介を描いた『Cの福音』でデビュー、その後多くの経済小説を発表してきた楡周平さんは、米国企業に所属していた経験を生かし、最新刊『ドッグファイト』で物流業界の現状を描き出しています。楡さんがこの小説を通して訴えたいこととは?

物流を握る者が一番強い

――『再生巨流』や『ラストワンマイル』などで物流の世界を描いてきた楡さんが、ネット通販と運送会社の生きるか死ぬか、呑みこまれるか否かの攻防を描いたのが新刊『ドッグファイト』です。ネット通販を取り上げた理由は何ですか?

少子高齢化が進んでいく日本という国を考えると、ネット通販なくしては生きられない人たちがたくさん出てくる、という現状があります。かつて大手スーパーの進出により、地元の家族経営によるパパママストアがどんどん閉店に追い込まれました。しかし今ではスーパーがネット通販によって潰されようとしています。特に過疎地化した地方ではより深刻です。近所にスーパーがなくなってしまうため、車の運転ができなくなったらすぐに買い物難民となってしまいます。

──主人公はコンゴウ陸送の経営企画部課長、郡司清隆です。コンゴウ陸送の現状は、取扱高は増加していますが利益率が低下しています。その理由は大口顧客による配送料金のダンピング。それを是正しない限り未来はないと上司に進言した郡司は、営業部に異動させられ、利益率低下の元凶である外資系ネット通販会社スイフト・ジャパンの担当になります。

ネット通販は最先端のテクノロジーを駆使して、とことん効率を追い求めてやっているIT企業の典型のように見えますが、とどのつまりは物流業なんです。情報だけは瞬時に行き交う世の中になりましたが、最終的に物を届けるには運送業者がいないと話にならない。アナログの極地で、すごく原始的なんですが、最後の行程を握っているところが本来は絶対的に強いはずなんです。

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