「ポケモン旋風」に沸く日本株の「落とし穴」 日銀だけ見ていると方向を見失う危険性

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FRBが資産バブルを防ぐために利上げを目論むとしたら、まずは市場に徐々に利上げの可能性を織り込ませ、市場金利を引き上げていくことから始める必要がある。

これまでFRBが利上げに慎重な姿勢を見せていたのは、中国経済を中心に世界景気の不透明感が強まっていたこと、ドル高による企業収益の鈍化と米国内での保護主義の台頭、英国の国民投票による不確実性などが主な理由であった。

これらの懸念のうち、英国のEU離脱ショックにともなう金融市場の動揺が限定的であったことに加え、米大統領選でドル高によって米国の雇用が奪われたと主張する「トランプ旋風」も若干弱まりつつある。直近の世論調査では支持率でクリントン候補が3.1%ほどトランプ候補をリードしている(14日時点の米RCP)などと報じられている。

イエレン議長の「タカ派発言」増加の可能性に注意

つまり、利上げをめぐる環境は、「世界経済」と「政治的配慮」に対する必要とする状況から少しずつ「利上げは経済指標次第」という方向に戻ってきている。

11月8日の大統領選前に利上げをすることは容易なことではないことを考えると、イエレンFRB議長は今後経済指標が米国経済の堅調さを示すようであれば、「タカ派発言」を強めることで、市場が織り込む利上げ可能性を高めようとしていくだろう。

今週26~27日に開催されるFOMCで利上げが行われる可能性はほとんどない。しかし、それは現在市場が見込む年内利上げの可能性を正当化するものではない。

今後株価や不動産価格が堅調に推移すればするほど、FRBから「タカ派的発言」が増えていく可能性があることは念頭に置いておくべきだろう。

米国の金融政策にまつわる環境は、「政治的配慮」を必要とする段階を脱しつつあり、「利上げは経済指標次第」、さらには「利上げは株価や不動産価格次第」にシフトしている可能性があることには注意が必要だ。

近藤 駿介 金融・経済評論家/コラムニスト

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こんどう しゅんすけ / Shunsuke Kondo

1957年東京生まれ、早稲田大学理工学部土木工学科卒業後、総合建設会社勤務を経て、31歳で野村投信(現野村アセットマネジメント)に入社。株式、債券、先物・オプション取引等を担当した後、野村総合研究所に出向しストラテジストとして活躍。再び、野村アセットに戻ってからは、担当ファンドが東洋経済の年間運用成績第2位に選出されるなどファンドマネージャーとして活躍。その他、運用責任者として、日本初の上場投資信託(ETF)である「日経300上場投信」の設定・上場を成功させ、1996年に野村アセット初のプロフェッショナル・ファンドマネージャーとなる。現在は金融や資産運用に関する客観的な知識を広めるべく、合同会社アナザーステージを立ち上げ、会長兼CEOとして、一般向けの金融セミナーや投資セミナーなど専門家向けセミナー等も開催中。自身が手掛けるメルマガ『マーケット・オピニオン』は、個人投資家から圧倒的な支持を得る。

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