国境なき医師団、日本での寄付集めに苦戦中 国境なき医師団 エリック・ウアネス日本事務局長に聞く

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欧米と日本では、寄付の考え方が大きく違うということはない。ただ、日本は島国文化からなのか、助け合いの精神は強いが、内向きだ。これに対して、特に欧州は歴史的、地理的にも植民地との関係が深く、外国への感心が高いこともあり、意識が外向きだ。日本人も自国の影響力を自覚し、もっと外向きになって国際問題に向き合い、世界の悲惨な現実を知るべきだ。

寄付集めでの日本と欧米の違い

寄付集めでは欧米との違いを感じる。日本は先進国の中で寄付を集めるためのコストが非常に高い。たとえば、米国では100ドル集めるのに12ドルかかるのに対して、日本は2倍の24ドルもかかる。

エリック・ウアネス
国境なき医師団・日本事務局長
1967年生まれ。95年エセック経済商科大学大学院修了。2002年同団体に参加、活動責任者などを歴任。05年より現職。

欧米では郵便料金、印刷費、銀行などの手数料、広告掲載料などNGO向けの料金設定があるが、日本には少ない。バス停にケガをした難民が写っているポスターを張りたくても自治体から許可されないこともある。また、寄付金を集めるための広告やDMを打つと非難されることもある。こうしたことが日本での寄付金集めの難しさにつながっている。

世界各国のMSFは、財政的には独立採算で活動を行っているが、100%寄付に頼っているので、寄付が減少すれば、支出も減らさざるをえない。活動は縮小していくことになる。MSF日本は寄付収入が増え続けていたが、昨年初めて減少した。

MSFでは、6~9カ月分の剰余金を維持することが基本ポリシーとなっている。しかし、MSF日本の昨年末の剰余金は3.5カ月分になった。支出は抑制しているが、このままでは今年前半には剰余金ゼロになる可能性がある。

(撮影:風間仁一郎)

木村 秀哉 東洋経済 記者

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きむら ひでや / Hideya Kimura

『週刊東洋経済』副編集長、『山一証券破綻臨時増刊号』編集長、『月刊金融ビジネス』編集長、『業界地図』編集長、『生保・損保特集号』編集長。『週刊東洋経済』編集委員などを経て、現在、企業情報部編集委員

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