次の日銀総裁は誰か? 日銀・白川総裁が異例の辞任表明

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安倍首相の意向だけで総裁人事は決められない 

白川総裁辞任の3月19日までにあと2回の金融政策決定会合が残しているが、何より注目されるのは、安倍政権と連携していく新体制の布陣だろう。総裁候補と目されている人物は現在複数おり、福井総裁時代、ともに副総裁を務めた岩田一政・日本経済研究センター理事長や、武藤敏郎・大和総研理事長もその中に含まれる。

ただし、財務省OBの武藤氏は、福井総裁の後任として政府が候補として示したものの、民主党が「日銀と財務省のたすき掛け人事だ」と反対、否決された経緯がある。衆院選で大敗したが、参議院で単独政党としては最大議席を有する民主党の意向は無視できない。また、みんなの党は「財務省OBは日銀総裁としての資質や能力、条件を具備していない」(江田憲司幹事長)としている。

いくら安倍首相が日銀人事でお気に入りの布陣をそろえようとしても、参議院では自民党、公明党で過半数の議席を持たないだけに、思いどおりの人選ができるわけでもない。総裁辞任と副総裁の任期満了という3月19日までに国会での同意を得ようとすれば、2月中にも総裁、副総裁の人事案が政府から示されるとみられる。

あってはならないことだが、仮に、国会で同意が得られずに次期総裁が3月20日の新体制発足までに決まっていなければどうなるのか。かろうじて副総裁が決まっていれば、5年前と同じく副総裁が総裁職を代行するのか、それとも、白川総裁が事態を見かねて「辞任」を撤回し、本来の任期である4月8日まで”続投”することになるのか、まったく不明だ。

 政府と日銀の連携姿勢を強く打ち出し、安倍政権は今のところ市場の期待を大きく高めることに成功している。しかし、野党の同意を得られず再度の空席という事態を引き起すようだと、にわかに期待が腰折れしかねない。安倍首相にとって白川総裁の辞任表明が想定内の出来事だったとしても、衆参両院での同意が必要な総裁人事は決して予断を許さない。

(撮影:尾形 文繁)

井下 健悟 東洋経済 記者

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いのした けんご / Kengo Inoshita

食品、自動車、通信、電力、金融業界の業界担当、東洋経済オンライン編集部、週刊東洋経済編集部などを経て、2023年4月より東洋経済オンライン編集長。

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