アベノミクスは麻酔かヘロインか 安倍政権の経済・金融政策に募る不安

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「アベノミクス」は日本経済にとって麻酔かヘロインか。

大量のカネを発行し、公共事業に年間20兆円の大盤振る舞いをし、円安を目指すことは、真の経済復活に必要な厳しい構造改革を進めるべき日本にとって、財政赤字をますます積み上げながら苦痛を和らげ、改革を避け、これまで以上に日本を景気刺激依存症にするヘロインとなるおそれがある。

日本が一時的な財政および金融刺激策を利用することはできる。GDP(国内総生産)は5年前につけた景気後退以前のピークをなお3%下回っており、この先2年の成長見通しは冴えない。

さらに、金融刺激策だけでは景気浮揚やデフレ脱却は図れない。日本銀行は金利を史上最低水準に引き下げることに成功しており、銀行による全貸付残高の半分近く(46・3%)の金利が1・25%を下回っている。だが、既存の生産能力さえ持て余している自動車やテレビメーカーが事業拡大のために借り入れを増やすとは考えがたい。

だからこそ、金融緩和と財政刺激策を組み合わせることが必要だ。たとえば、プロパンガスタンク、汚水槽、ガス管を利用して郊外の住宅同士をつなぐなど、日本が資金を使うことができる有意義なプロジェクトは数多くある。これにより、足元の需要が刺激され、長期的には環境汚染とガソリン利用が減る。また、こうした公共事業はGDPギャップ(実際のGDPと完全雇用かつ設備フル稼働時のGDPとの差)を縮小するので、デフレ克服も図れる。同時に金融緩和を続けることで、財政赤字が拡大しても金利上昇につながりにくい状態を構築できる。

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