佐藤優の教育論「本当に力がつく本の読み方」

『子どもの教養の育て方』特別編(その3)

子どもの教養の育て方』(佐藤優/井戸まさえ)の中で、「教養=読む力+書く力+話す力+聞く力」について、それぞれの具体的な鍛え方を徹底解説している
"知の怪物"と呼ばれる作家の佐藤優氏は「現在の日本には3つのエリートがいる」と指摘する。
第一は、古いシステムを動かすノウハウを持っている「旧来のエリート」、第二は、社会、政治の混乱期に、急速なキャリアの上昇を行った「偶然のエリート」。この2つのエリートが日本を牛耳るかぎり、日本は閉塞状態から抜け出すことはできない。
今の日本に本当に必要なのは、第三の「未来のエリート」だ。子どもや若者が本物の教養を身につければ、日本は10年後に大きく変化する。
では、どうすれば若者は佐藤氏のような教養人になれるのか? どうすれば子どもを教養人に育てられるのか?――そんな疑問に、5児の母であり、前衆議院議員の井戸まさえ氏が迫る。
※本対談は『子どもの教養の育て方』の未収録部分を編集した特別版です

※ 過去の対談はこちら:

(その1)偏差値を追うと人格が歪む

(その2)行かせるなら公立? 私立?

批判的な「本の読み方」とは?

井戸:小学生に読ませる本として、夏目漱石の『坊っちゃん』や『吾輩は猫である』は、暴力的なシーンも多く無条件ではすすめられないという話を、『子どもの教養の育て方』(東洋経済新報社)の対談でされていました。

佐藤:僕としては、むしろお父さん、お母さんに『坊っちゃん』や『吾輩は猫である』を読んでもらって、漱石とはどういう人だったのかということを考えてほしいと思います。

かなり神経衰弱で、よく暴力を振るう人だったということは、漱石の奥さんの夏目鏡子さんの『漱石の思い出』(文春文庫)に出ています。併せてそれも読んでおくのもおすすめです。

井戸:古典だから、名作だからということで無条件に受け入れるのではなく、批判的な観点も持ちながら読むということも大事なのですね。

佐藤:そういうことです。

ここで「批判」という言葉について説明しておきましょう。批判というのは英語(フランス語)では「critique」で、ドイツ語だと「Kritik」ですが、「批判」という訳語は実は誤訳なんですね。

「critique」というのはどういうことかというと、「対象を受け止めて、対象の論理をとらえ、そしてそれに自分の意見を加える」ということなんです。つまり、全面的に賛成だという場合も「critique」なんです。

日本では「批判的だ」というとネガティブな意味なんだけれども、ヨーロッパやアメリカで「critique」、日本で「批判」といわれているものは、8割ぐらいは「肯定的」なんです。「全面的に意見に賛成する」あるいは「その意見に基本的に賛成だけれども、ここを加えたらもっとよくなる」ということです。

だから、マルクスの『資本論』で、「経済学批判」というサブタイトルがついているというのは、「基本的には古典派経済学の考え方を認めます。そのうえでこういうことを付加したらいいです」という意味なんです。

文芸の場合には「文芸批評」と言いますね。あるいは「評論家」という言い方もあります。だから、「批判」も「評論」も「批評」も本来は全部一緒なんです。

そのような意味において、批判的な読み方をするということが、本を読むときには非常に重要なんです。

そこで大事なのは、著者の意見と自分の意見を分けて、「この人はこういうことを言っているが、それについて自分はどう思うか」というのを考えることです。

基本的に賛成なのか、基本的に反対なのか、あるいはよくわからないのか。あるいはここまではわかるんだけれどもこの先は私は意見が違うとか、そういう分類をしながら読む訓練をすることが重要です。

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