ヴィレヴァン、伝説の1号店で「本を売る」執念 サブカルファンも脱帽の「隠し味」が満載

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ほかの店舗ではなかなかお目にかかれない書籍も

都心の小規模店舗では、本をほとんど置かないところが少なくない。ただ、本店は広い店内にしっかり書籍の棚が設けられている。

漫画家の大友克洋コーナーでは、1984~1993年に刊行された代表作の『AKIRA』を中心に全面展開しており、絶版中の日本SF大賞を受賞した伝説的漫画『童夢』も「今も注文を出し続けている」(本店の書籍責任者、加藤清希さん)という執念だ。

同じく人気漫画家の松本大洋の作品もずらり。昭和50年代の三重を舞台にした『Sunny』全6巻を平積みでプッシュし、同作の登場キャラをあしらったTシャツなどの関連グッズも併売。ここまでの展開は他社店ではまずお目にかかれない。また、「サブカルの総本山」と呼ばれた漫画雑誌『ガロ』(2002年に事実上廃刊)のバックナンバーまで並べている。

特製の「黄色いポップ」に踊るユニークな表現

作家、永江朗の『菊地君の本屋』(主人公はヴィレヴァン創業者の菊地敬一会長)などヴィレヴァン関連本コーナーも設置するが、先出の加藤さんが復刊を切望するのは、菊地氏が1997年に出した著書『ヴィレッジ・ヴァンガードで休日を』だ。「これが絶版になっていて並べられないのは、本当に悔しい」(加藤さん)。

本店内の岡本太郎コーナー

芸術家・岡本太郎関連のコーナーには、ソフトビニール製の「太陽の塔」が鎮座する。さらに、人気作家・森見登美彦のファンタジー小説『太陽の塔』まで一緒に並べるという遊び心も見せる。1990年代から、本店で売れ続けている書籍『リトル・トリー』も依然平積みだ。

こうした書籍については、特製の黄色いポップに店員が推す理由をユニークな表現で書き込んでいる。村上春樹『風の歌を聴け』には「名言まんさい。なにかと引用したがるニュービーはまずコチラから」、沙村広明『波よ聞いてくれ』には「ズベ公描かせたらやっぱ天下一だわ!」、開高健『オーパ!』には「驚きの言葉オーパ!」のキャッチが書かれている。

さらに、石ころコーナーには「生まれ変わるなら、次は石ころがいい」といった、これまたユニークなポップが添えられている。ただ、あまり挑発的なポップは破かれてしまうことも多いそうで、首都圏店舗よりも比較的マイルドな内容が多い印象だ。

本店では現在、売れ残っても返品できない雑貨に偏重した売り場構成を見直し、書籍の棚を改めて強化している。この点も本好きには嬉しいところだ。書籍と関連雑貨を一緒に並べ、ついで買いを促す仕組みを確立している。

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