東大留学生ガッカリ、「日本での就職」の現実 日本企業で働きたいのに働けないのはなぜか

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3. 日本語

楽天やグーグルなど英語が日常的に使われている企業への就職を希望しない限り、相当高い水準の日本語力が要求される(外資系企業でさえ、だ)。就活をするにあたってまず大変なのはエントリーシート。いくつもの企業に対して、説得力のある回答を日本語で書くのは容易ではない。いざ書類審査を通過して面接に進めたとしても、英語で面接できる会社はほとんどない。今どきの若い日本人でさえ満足に使えない敬語を外国人が操るのは至難の業だ。

4. 情報不足

就活は情報収集力に左右されるといっても過言ではない。これは留学生にとっても同じだが、たとえば私たちがもっとも知りたい「外国人にとって働きやすい会社なのかどうか」という情報を知り得るのは非常に難しい。各企業のホームページで外国人従業員の人数を調べたり、日本の学生と一緒に会社説明会に参加したり、「マイナビ」など就活サイトをチェックしたりするが、これを「読みこなす」にも相当の日本語力が必要だ。

それでも、留学生が必要とする情報を得ることは難しい。たとえば、企業のホームページ上に記載されている外国人従業員数は、しばしば海外支社の社員の数が含まれており、本社でどれくらい働いているのかわかりにくい。

東京大学の留学生、オースティン・ゼンと日本国際化推進協会(JAPI)が昨年共同で行った「日本で働くことについての調査」(日本の留学生819人が回答)によると、就活において留学生が知りたいのは、「労働時間」(65.4%)や「任されるタスク」(57.2%)、「評価の基準」(50.7%)、「要求される日本語のレベル」(42.0%)などだが、こうした情報を事前に知り得ることは、たとえばOGやOBに会わない限りわからない。私自身も何人か会っているが、日本人の学生に比べれば先輩の数は極端に少ない。

就職できてもなじむのがまた難しい

無事(?)就職できたとしても、外国人が日本の会社になじむのは難しいようだ。JAPIの調査によると、外国人が直面する困難のトップは長時間労働(57.6%)で、その後外国人差別(53.9%)、コミュニケーション様式(42%)、遅い昇進(27%)、評価基準(25%)――と続く。

前述の経産省の報告書にも、「3週間ほど前に突然異動を命じられるが、異動の意図について会社からの説明はない。また人事部とキャリアについて相談する機会もない」(運輸業)、「就活時の面接では自分が話すだけで、企業担当者が何を自分に望んでいるのか、まったく分からなかった。入社後も同じ」(サービス業)など、実際に日本企業に就職した外国人の「戸惑いの声」が掲載されている。結果、せっかく就職したにもかかわらず、わずか数年で退社し、日本を去る外国人も少なくない。

日本企業と外国人にこうした「ミスマッチ」が生じる要因の一つは、日本企業による外国人労働者に対する信頼感の低さではないだろうか。

日本企業への就職を目指す外国人は複数言語を操り、高学歴(修士号や博士号取得者も少なくない)で、総じて能力が高い。そして、その能力を生かして日本企業や日本経済に貢献したいと思っている。にもかかわらず、結局のところ日本企業が求めているのは、そうした能力ではなく、「通訳」としてどれだけ使えるか、ということに、多くの外国人は入社してまもなく気づくのである。

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